【コラム】ACIDMAN、アコースティック盤発売! ホリエアツシと重ねるロマンと美学
2015.11.18 20:30
ACIDMANによるアコースティックセルフリアレンジ集の第2弾となる『Second line & Acoustic collection II』が本日11月18日にリリースされた。原曲のハードエッジなロックの熱量が、VERBAL(m-flo)のラップとドラムンベース的なビートの中でクールに息づく“±0(Second line)”。シューゲイザー的なギターのサイケデリック感を、ハイブリッドかつフリーキーな質感へと塗り替えてみせた“HUM(Second line)”。ギターロックのストイシズムそのものの切迫感が、板橋文夫のピアノとともにスウィングジャズ的なグルーヴ感へと生まれ変わった“スロウレイン(Second line)”。初の大木伸夫単独での弾き語りによって魂のダイナミクスをくっきりと写し取ってみせた“季節の灯(Acoustic)”……聴く者の心の大気圏を突破するべくメロディ&アンサンブルの推進力と訴求力を極限まで研ぎ澄ませてきたACIDMANのロックの物語が、パラレルワールドで別種の色彩と輝きを放つかのような、豊潤かつミステリアスな魅力に満ちた1枚だ。
太古の激動の如く渦巻くプリミティヴな衝動を、およそ3ピースロックとしては最もソリッドな形で鳴らし続ける真摯な音楽共同体。巨大な宇宙の中に生きる脆くて儚い人間という存在の営みを、ミクロン単位までブレなく活写するような、大胆にして精緻な音楽世界……作品ごとにフォーカスするポイントこそ異なるものの、ACIDMANの楽曲はいつだってそんな途方もないイマジネーションと情熱に裏打ちされている。彼らの音楽から不純物的な要素を徹底的に排除している原動力は取りも直さず、たった3人で鳴らすロックの力で人間の真実に迫ろうとするロマンに他ならない。
そして――音楽の方向性もバンドのカラーもACIDMANと異なるが、「無限のロマンに純度100%のロックで手を伸ばすべく己を磨き続ける」という点において、紛れもなく共通するバンドがいる。ストレイテナーだ。
遡ること5年半前の「JAPAN JAM 2010」。ストレイテナーは前半アコースティック&後半エレクトリックという編成で、ACIDMANは全編アコースティックセットで出演。ストレイテナーがアコースティックセットのゲストとしてACIDMAN・大木を舞台に招き入れて、名曲“SIX DAY WONDER”をホリエアツシ&大木の歌で響かせた直後、今度はACIDMANのステージに「インディーズ時代から競い合って、ともに切磋琢磨してきた仲間」という大木の紹介でストレイテナー・ホリエが登場。大木とホリエが歌い上げる“リピート”の珠玉のハーモニーが、しなやかな波動のように広大な空間を震わせていく――あの至上の音楽体験の感激が、今作『Second line & Acoustic collection II』のために新録された“リピート”のACIDMAN&ホリエのコラボレーションを聴いた瞬間、驚くほど鮮明に蘇ってきた。
何より、「JAPAN JAM 2010」での一度限りの“リピート”セッションを、改めて今回ホリエがピアノ&歌を手掛ける形で音源化するに至ったのは、ふたつのロマンが重なり合ったあの瞬間の名演が、僕らにとってそうであった以上に、彼ら自身にとって忘れ難い奇跡的な経験だったからこそだろう。刹那に懸ける美学が、時間を越えて永遠の輝きを獲得した証が、今作の“リピート”には確かに刻まれている。(高橋智樹)