それこそ“StaRt”も“Speaking”も含め、Mrs. GREEN APPLEの激アッパーな音楽世界が同時に、拭いようのなく胸焦がすせつなさを宿していることは、一度でもミセスの音楽に触れた方ならご存知のはずだ。
以前ここRO69で大森元貴(G・Vo)に取材した際も、「自分としてはゴリゴリのポップスを鳴らしてるつもりなんですけど、聴いてみると……『あら、せつない』みたいなことが多くて(笑)。不思議な作用をもたらしてるんですけど。そういうのも引っくるめて、ポップスとして鳴らしたいなって」(LILI LIMIT・牧野純平との対談。元記事はこちら→ http://ro69.jp/feat/newforce_201601/)とその「極彩色ポップに潜むせつなさ」を自ら語っていたし、その「せつなさ」は大森自身の憂いや葛藤といった内面的な要素から生まれるものだと勝手に思っていた。
だが、どうやらそれは違うらしい。
ということが、最新シングル『サママ・フェスティバル!』を聴いて、おぼろげながらわかってきた。
Mrs. GREEN APPLE – サママ・フェスティバル!
現在発売中の『ROCKIN'ON JAPAN 7月号』のメンバー全員インタビューでも、大森は表題曲“サママ・フェスティバル!”について「今まで結構きっかけが陰でそれを陽に変えてきたんですけど。きっかけも陽で直接陽にアウトプットしたらおもしろいんじゃないかなって」とソングライティング面でのシフトチェンジがあったことを窺わせている。
では、“サママ・フェスティバル!”でミセスの「せつなさ」は消えたのか。
答えはNOだ。
むしろ、そのパワフルな高揚感と競い合うように、その「せつなさ」はより強烈に渦巻いている。
5人のカラフルで躍動感に満ちた音楽にスリリングなまでのドライブ感を与えているのは他でもない、「この次元に留まっていてはダメだ」という圧倒的な冒険心と闘志だ。そして、その「ポップを武器に闘いを挑む」というその姿勢こそ、彼らの「せつなさ」の正体だった、ということだ。
今回の新曲“サママ・フェスティバル!”では、その「混沌とした音楽シーンという戦場へ赴くポップソルジャー」としての姿勢がより鮮明に打ち出されたことによって、あたかもポップの未来のために闘う兵士の旅立ちを見送るような切実な「せつなさ」が生まれてしまっているのだ。
“サママ・フェスティバル!”のEDM直系のぶっとんだシンセサウンドはそのまま、そのポップの銃口をロックのみならずダンスミュージックはじめ他ジャンルすべてに向けていることの表れだろうし、目映いメロディあふれるカップリングの名曲バラード“umbrella”は、大森のポップセンスの鋭利さだけでなくソングライターとしての基礎体力の高さを存分に物語っている。
前述のRO69の取材でも、「1コーラスないしは全体を作った上で、それぞれの楽器のアレンジもして――楽譜が書けないので、メンバーにそれを耳コピしてもらうっていうことをやっていて。耳コピできる用の音源としてじゃなくて、ちゃんとマスタリングまで済ませてから送るんで。(中略)デモっていうか、音源として渡すんで。音圧もパツパツにして渡しますから(笑)」と痛快なまでの才気と情熱あふれ返りっぷりを語ってくれていた大森元貴19歳の姿が、“サママ・フェスティバル!”の音像と重なってきて、胸が熱くなって仕方がない。
2016年、ミセスの夏はとんでもなくアツくなりそうだ。(高橋智樹)