アリ・シャヒードがMarvel 『ルーク・ケイジ』の劇中音楽を担当。原作コミックやファイフについて語る

  • アリ・シャヒードがMarvel 『ルーク・ケイジ』の劇中音楽を担当。原作コミックやファイフについて語る
  • アリ・シャヒードがMarvel 『ルーク・ケイジ』の劇中音楽を担当。原作コミックやファイフについて語る
  • アリ・シャヒードがMarvel 『ルーク・ケイジ』の劇中音楽を担当。原作コミックやファイフについて語る
  • アリ・シャヒードがMarvel 『ルーク・ケイジ』の劇中音楽を担当。原作コミックやファイフについて語る

9月30日にNetflixで独占ストリーミングが始まったドラマ・シリーズ、Marvel 『ルーク・ケイジ』だが、その音楽をあのア・トライブ・コールド・クエストのDJとして活躍し、プロデューサーやR&Bユニットのルーシー・パールでの活動でも有名なアリ・シャヒード・モハメッドが手がけている。

Marvel 『ルーク・ケイジ』の原作はスパイダーマンなどで有名なマーヴェル・コミックスが70年代に世に送り出したブラック・スーパーヒーローもので、ルークは冤罪で投獄された際に人体実験を受けることになり、そのせいでほとんど不死身な肉体を手に入れ、その後、アメリカのブラック・コミュニティー版必殺仕置人的稼業に乗り出すという物語になっている。今回Netflixでドラマ化するにあたって物語は現代のニューヨークのハーレムに設定してあって、善良な市民として生きようとするルーク、しかし、ルークの周囲の人間を脅かす地元の顔役コットンマウス、そしてニューヨーク市警らが錯綜するストーリーが展開していくことになる。

また、ハーレムの裏社会を牛耳るコットンマウスは裏稼業で集めた資金を音楽クラブ「ハーレムズ・パラダイス」に注ぎ込んでいるという設定になっていて、このクラブが物語の中でもさまざまな人物が交錯する場として重要な役割を担っていくことになる。いってみれば、アポロ劇場とコットン・クラブを現代的な施設として合体させたような店なのだが、ここにラファエル・サディークやフェイス・エヴァンスらが劇中で出演して、実に刺激的な演出とリアリティを作品にもたらすことになっている。当然、作品のタイトル・トラックやスコア全般を手がけているアリもこうした演出にもある程度関わっているはずだし、ドラマ全体が音楽とは切り離せないものになっているという意味ではアリの起用は素晴らしいとしかいいようがない。それでなくても、毎回のエピソードのタイトルがすべてギャング・スターのトラックの名前にちなんでいるという、ヒップホップ的な意味でも凝ったドラマになっているので、アリの抜擢は当然といえば当然だったのだ。そんなアリに今回のドラマについてどう取り組んだのか訊いてみた。

──今回はコラボレーターのエイドリアン・ヤングとともにMarvel 『ルーク・ケイジ』の音楽を手がけていますが、もともとルーク・ケイジについては子供の頃から読み耽っていたマンガだったのでしょうか。

「実はオリジナルのルーク・ケイジのマンガはもともと読んでなかったから、そこは許してほしいんだよね(笑)。実際にルーク・ケイジのマンガを読むようになったのはそのずっと後になってからのことで。だから、ぼくには直接、ルークの物語と子供の頃から繋がってたわけじゃないんだけど、友達の中にはルーク・ケイジの大ファンっていうのはたくさんいるからね。だから、『ルーク・ケイジのドラマ用の音楽をやらないかって話があってさ』なんて話をしようもんなら『マジかよ!?』って大騒ぎになって、そのままマーヴェル・コミックスの熱狂ファン・トークになっちゃうんだよね(笑)。まあ、その様子を見てるだけで、ああ、これはちょっとすごいことなんだなあってよくわかったし、それだけで楽しみだったし、やる気にもなったんだけど、その友達連中の様子を見てると、いやこれは気合いを入れてルーク・ケイジについてよく勉強しないとやばいなってあらためて決心したんだよ」

──もともとこの原作コミックとその世界観は70年代に生み出されたものですが、今回は現代に舞台を移し替えていることで、あなたにも取り組みやすいものになったのではないかと思います。でも、特に工夫したようなところはどういうところでしょうか。

「確かにルーク・ケイジの物語が70年代のブラック・ムービー全盛期に生み出されたことはわかってるんだけど、番組の総指揮を執ったチェオ(・ホダリ・コーカー/エグゼキュティヴ・プロデューサー、原案担当)の解釈ではブラック・ムービー時代っていうのは主役を張る黒人俳優が007シリーズにおけるショーン・コネリー的なインパクトをすぐに持てた時代だったっていうものなんだ。そうした意味で、ルーク・ケイジというキャラクターがアフリカ系アメリカ人のコミュニティーにとって、ひとつのモデルとして、あるいはスーパーヒーローとして、どういう意味をかつては持っていて、それが今はどうなのかってことをまずは考えなきゃならない。つまり、それだけ強烈なキャラクターを70年代から今の時代にまで持ってくるわけだから、エイドリアンとぼくとで、音楽がルーク・ケイジのストーリーとしての意味の重さと釣り合うようにしなきゃならないと思ったんだ。特に今回のシリーズのエピソードの中には、説教臭くなることなく、ものすごくシリアスに、なおかつ黒人特有の問題として問いかけるモチーフやテーマもいろいろあったからね。だから、チェオと製作チームが書いていたそうしたモチーフにきちんと対応するような音を作りたかったんだ。それでいろんな音を作っていくことになったんだけど」

──劇中で登場するクラブ、「ハーレムズ・パラダイス」は音楽的にストーリーの中でも重要な要素となってきますし、ラファエル・サディークやフェイス・エヴァンス、チャールズ・ブラッドリーらのアーティストも実際にクラブの出演アーティストとして登場したりもします。こういう演出や企画もまた、あなたのものだったんですか。

「あれはチェオの好みで出演してもらっていて、出てもらいたいアーティストのチェオのリストっていうのがあったんだよね。ラファエルもそのリストに入ってて、ぼくはラファエルとは一緒にルーシー・パールというグループをやってたから、ぼくにはラファエルは兄貴みたいな存在なんだよね。しかも、一緒にプロデューサーとしてスタジオで作業もずっとやってきた仲だから、チェオのリストについて知った時、『あー、なんだ、ラファエルならぼくが声をかければすぐにでも来てくれるよ』って恩を売ったというか(笑)。そういうわけでラファエルは確実に物語の登場人物として出演を請われたもので、すごく特別な出演になったんだ。実際、出演の話を持っていった時に書いたばっかりだった曲をそのまま歌ってくれたからね。それとフェイス・エヴァンスについては、数年前の曲を歌ってもらってるんだけど("Mesmerized")、エイドリアンとぼくとしてはぼくたちがスコア用に用意していたサウンドの質感をこの曲でも使ってもらいたかったんだよ。だから、フェイスにはオリジナル・ヴァージョンでやってもらうこともできたんだけど、ぼくたちのやってる音と合わせてもらうために、ぼくたちの演奏やレコーディング・アプローチに合わせてあの曲をレコーディングし直したんだよ。そうやって微妙な感じで全体性を作り上げていくっていうのかな。そこはかとなく統一感を作り出していくっていうか。でも、ハーレムズ・パラダイスに関してのほかの要素についてはすべてチェオの発案によるものなんだ」

──テーマ曲も素晴らしい曲になっていますよね。個人的にはラロ・シフリンの『燃えよドラゴン』のテーマ曲を彷彿させるところもありつつ、カーティス・メイフィールドの『スーパーフライ』のノリも感じさせるところがあって、すごくよかったです。でも、あなた自身はこの曲を形にしていく時に特にインスピレーションとしていたものはなにかあったんでしょうか。

「なるほど、そう感じたんだね。つまり、もともとルーク・ケイジは70年代のブラック・ムーヴィー全盛の時代に生み出されたものだから、テーマ曲についてはちょっとだけでもそういう時代の匂いを持たせたかったし、それとマーヴェルからのリクエストで、パワーも感じさせるものにしてほしいということもあったんだ。それでエイドリアンとふたりで、チェオとマーヴェルの両方が同時に喜ぶような音をいくつか作っていくことになったんだ。だから、エンディング・トラックも、タイトル・トラックに一番向いてる音と質感を探しているうちにできたトラックだったんだよね」

──なるほど。エンディング・テーマ曲はよりヒップホップ感が強くてこれもまた素晴らしかったのですが、そろそろお時間ということで最後にお聞きしたいのですが、エピック・レコード代表のL・A・リードが先日発表を行いましたところ──

「L・A・リード? 誰だそいつ(笑)? 知らないんだけど(笑)」

──(笑)それによれば、ア・トライブ・コールド・クエストの新作制作が進められているということだったんですが、このアルバムについてなにか教えてもらうことはできませんか。

「それについてはまだコメントできないんだよ……(笑)」

──(笑)わかりました。最後に3月に亡くなったファイフ・ドッグについてお聞きしたいのですが、ア・トライブ・コールド・クエストとヒップホップにとってファイフがどれだけの意味を持っていたのか教えていただけませんか。

「実は昨日ね、ソウルキャンプでDJセットをやって、その後でインスタグラムに音源をファイフに敬意を表して上げたばっかりだったから、こういう話になるのもなんかあるんだろうね。音源はファイフが書いた曲で"Dear Dilla"っていう、J・ディラにファイフから捧げたもので、J・ディラがファイフ個人にとってどれだけ大切な存在だったか、それとヒップホップにとってどれだけ大切な存在だったかを訴える曲になってるんだ。とにかく、ぼくはファイフがこの曲にものすごく没頭してたのをよく思い出すんだよ。つまり、この曲に本当に命を吹き込もうとしてたんだよね。そしてそれはいまだかつてここまで力を尽くすファイフは見たことがないっていうくらいのものだったんだ。もちろん、もう何度も聴いてる曲だけど、ファイフという人物がどんな人だったのかをよく物語る曲になってるんだよ。ものすごく情熱的で、愛に溢れていて、それとものすごくおかしなやつで、なにかというと冗談をかましててさ。もうただ心のあったかいやつだったんだ。ヒップホップというカルチャーをものすごく愛していて、ア・トライブ・コールド・クエストのこともものすごく愛してたんだよ。だから、本当にファイフという人物を知りたいんだったら、この曲を聴けばいいんだよ。ほかのア・トライブ・コールド・クエストの曲じゃまだわからないっていうんだったらね」

Marvel 『ルーク・ケイジ』はNetflixで配信が始まっている。
https://www.netflix.com/jp/title/80002537

Marvel 『ルーク・ケイジ』の予告編はこちらから。
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする