【コラム】Hi-STANDARD『ANOTHER STARTING LINE』を改めて、じっくり語ります

【コラム】Hi-STANDARD『ANOTHER STARTING LINE』を改めて、じっくり語ります

Hi-STANDARDが、16年ぶりの新作となるシングル『ANOTHER STARTING LINE』をリリースしてから、早くも数日が経った。畳みかけるように、2016年12月7日(水)にはカバー曲で構成されたシングル『Vintage & New, Gift Shits』をリリース、2016年12月3日(土)から東北+新潟を回るショートツアー「GOOD JOB! RYAN TOUR 2016」をスタートするというニュースが! いつしか「特別なバンド」、もっと言えば「奇跡の塊」となっていた彼らが、今、こうして(ある意味)普通のバンドらしい活動を始めたことに、喜びと驚きが入り混じった感情を抱かずにはいられなかった。しかし『ANOTHER STARTING LINE』を聴けば聴くほど、その理由は、ここに収録されている4曲で歌われているような気がしてきたのだ。

ザッカザカでカラッとしたギターで、16年ぶりのサプライズリリースという重みを「何か?」とサラッと笑い飛ばしてしまうような“Touch You”で、今作は幕を開ける。《Everybody wants to touch the sun》と歌っているけれど、ああもう太陽ってあなたたちのことだよ!とウズウズしながら興奮が高まってくる。そこから間髪入れずに始まる表題曲“Another Starting Line”。《I’m home again》という歌い出しからグッときてしまうが、復活後に重ねてきたライブの成果が表れたような、美しく溶け合ったコーラスワーク、かつてよりも深い輝きを増したメロディ、そして、彼ら自身のことだけではなく、僕らの気持ちを代弁してくれたような歌詞――もう、全てにおいてハイスタ、もっと言えば今のハイスタにしか表現出来ないものがギュギュギュっと詰まっているのだ。《すべて大丈夫なんだよ/僕たち大丈夫なんだ/これはもうひとつのスタートライン/キミと僕への》(和訳)――何だかずっとこうハイスタに歌って欲しかった気がする。そして、ヒリヒリとしたメタリックなサウンドで、《遅すぎることなんてない/操られてちゃいけない/長い道のりになるかもしれないけれど/失うものなんてないじゃないか》(和訳)と呼びかける“Nothing To Lose”を噛み締め、♪オー、オオーという黄金のシンガロングが目に浮かぶ“Rain Forever”の《約束するよ この雨も永遠には続かないのさ》というメッセージにリアリティを感じながら、今作は幕を閉じる。

今作のレコーディングには、『GROWING UP』(1995年)、『ANGRY FIST』(1997年)の制作にも携わったライアン・グリーンが参加(ツアータイトルも、そこに起因していると思われる)。それだけに、耳に染み付きまくっている鉄壁のハイスタサウンドが表現されているのも頷ける。とは言え、客観的な「ハイスタらしさ」と言うよりは、感情的な「ハイスタをやりたい」、「ハイスタだったらこれが出来る」という思いの方が、今作では際立っている。そういう思いにならなければ、新譜を作るところまで行かなかっただろう。彼らは操られることはないのだから。

雨が上がり、太陽がきらめく中、彼らは長い道のりのスタートラインを再び切った。僕らも走り出そう、また虹の下まで。この時代にもハイスタはいる。(高橋美穂)
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