発売直前! RADWIMPSのアルバム『人間開花』が大傑作なるその理由のすべて

発売直前! RADWIMPSのアルバム『人間開花』が大傑作なるその理由のすべて - 『人間開花』初回限定盤『人間開花』初回限定盤

『ROCKIN’ON JAPAN』11月号に掲載したillionのインタビューで野田洋次郎はこう話していた。

「RADはまた相当いいと思う。すべてを吞み込んで、受け入れて、出した答えだから。僕は今感動しますね、RADの新曲は」

そして、そこから数ヶ月後に届いたRADWIMPSニューアルバム『人間開花』の全曲音源。映画『君の名は。』主題歌の“前前前世”と“スパークル”のオリジナルバージョン。そして、昨年11月25日、デビュー10周年タイミングで行われた初の対バンツアー「胎盤」の最中にリリースされたシングル“記号として”“‘I’ Novel”も入っている。
もう感動的なまでの大傑作だ。視界は開き切っていて、まっすぐで、生きる喜びに溢れていて、パワフルで瑞々しい。RADWIMPSにとって、初めて青空の下に駆け出したような、快晴が似合うアルバムと言っていいのではないだろうか。
『君の名は。』の劇判について、野田洋次郎はこんなコメントを寄せている。

「ど真ん中を真っ直ぐに突き進む――この映画から強く受けた印象です。主題歌4曲すべてがラブソング。いつもは、つい逃げがちな性格で、ここまでストレートに表現してしまうと恥ずかしさが出てしまい、別の方向性や受け止められ方を求めてしまうんです」

その「ど真ん中を真っ直ぐに突き進む」、そしてその言葉が、歌が、「もうこれでしかないメッセージを放っている」“前前前世”と“スパークル”だけでなく、多くの楽曲から放たれている。

まず、“光”が素晴らしい。まさに眩しい光の中で疾走しているような、シンプルで瑞々しく抜けのいいバンドサウンド。何が感動的かというと、サウンドのスコーンとした抜けの良さもさることながら、野田洋次郎がただ日々を過ごす中で、君と過ごした日々と、今の君に思いを馳せて、両手を広げて駆け出しているような、日常に根付いた心情を歌っている、ということだ。

ウォームな感触のエレクトロに、ゴスペル、モータウンテイストも感じさせるソウルがまざりあったようなサウンドデザインの中、ただひとり、自分だけの力で大地にしっかりと足をつけ、まっこうから自分自身を肯定し、愛する“O&O”。以前の野田洋次郎は、自分の存在意義を、愛する「あなた」の中に半ば盲目的に見出すことで、見つけようとしていた。あらゆる情報を高速処理したようなハイブリッドミクスチャーに乗せたそのラブソングの数々は、とても純粋で、過激で、狂おしくて、美しく、革命的だった。約15年前、RADWIMPSが結成し、野田洋次郎がみんなの前で歌を奏で始めた時、ラブソングの歴史は新たな扉を開いたといっても過言ではない。そのあなただけへのラブソングと表裏一体ではあるが、一方で洋次郎は、生とは何か、死とは何かという根源的な問いに対し、極限まで命に潜ることで、正解を見出そうとし続けた。しかし、この『人間開花』には、太陽が降り注ぎ、花が咲き、人々が日々を送る、目の前の日常における生活者としての野田洋次郎の姿がある。

山口智史という唯一無二の存在が病気によってバンドから離脱し、崖っぷちに追い込まれた中、ツインドラムという掟破りの発想でもって、何倍もチューンナップされたエンジンで激走した2015年があった。「あなた」ひとりに向けて音楽を放っていたところから、いつの間にかRADWIMPSの歌は、たくさんのみんなの歌になった。アニバーサリーツアーファイナル「RADWIMPSのはじまりはじまり」で洋次郎は、「幸せしかないです」と3万人の前で言いきっていた。巨大な喜びも悲しみも、別れも出会いも味わいながら、不器用だけど何よりも誠実に続けてきたRADWIMPSというかけがえのない存在。ロックバンドをやっていて良かったと、この歌を歌ってきて良かったと歌い放つ、とても陽性で、個々のプレイビリティで気持ちよくバンドアンサンブルの摩擦を起こす“トアルハルノヒ”もある。

明日なんて未来なんてどうなるかわからない、その言わば「闇」の中、ただただ前を向いて、遮二無二走る。何億年の地球の歴史に比べたら、僕たちの人生なんてほんの一瞬なんだから、とにかく命をスパークさせるかのように進むんだと、なんの迷いもなく歌う“ヒトボシ”もある。そのサウンドデザインが、『人間開花』の中でも一番の軽やかで爽快なバンドサウンドだというところも、とてもぐっとくる。

そもそも高いラップの技術を持っている洋次郎がさらに進化したラップを聴かせる、illionでも踏み込んでいたブレイクビーツ的なヒップホップ曲“AADAAKOODAA”もある。深遠なエレクトロニカからアッパーなダンストラックに移行する、音と言葉が無邪気に戯れる今までなかったようなアプローチの曲“アメノヒニキク”もある。少年時代と未来に思いを巡らせる、美しすぎるピアノバラード“週刊少年ジャンプ”もある。「人間」の生き方について強烈な皮肉をこめた、ピアノの旋律が力強く響く、ゴスペルチックなソウル“棒人間”もある。そんな強い心で歌う「あなた」へのラブバラード“告白”では、確かな永遠の愛が歌われている。

これまでの人生を振り返り、これからの人生について歌う、私小説的な“‘I’ Novel”。「針の穴に糸を通すような日々」と、「これからの日々」を繋ぎ、強烈な違和感を感じてきた「この世界」でどう生きるのが正しいのか、ということを歌った“記号として”は、『人間開花』において、今までを踏まえ、力強く突き進もうという意志が貫かれている。

本当に晴れ晴れしくて、生きるエネルギーに溢れたアルバムだ。この『人間開花』は、この先ずっと、多くの人にとってとても大切な作品になるのだと思う。発売日は、2016年11月23日(水・祝)。RADWIMPSが、究極的な個のラブソング『25コ目の染色体』でメジャーデビューしてから、ちょうど11年後のその日だ。(小松香里)

(ROCKIN'ON JAPAN 2016年12月号より転載)
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