デヴィッド・ボウイの命日に、盟友トニー・ヴィスコンティが追悼の声明を発表
2017.01.13 16:26
昨年1月10日に69歳で亡くなったデヴィッド・ボウイ。彼の盟友であり、プロデューサーとして数々のアルバムを手掛けてきたトニー・ヴィスコンティが、ボウイの命日に追悼の声明を発表した。
2016年1月6日――最悪のネクスト・デイ
僕はトロントのホテルの一室でぐっすり寝ていた。午前2時ごろ毎秒ごとに携帯電話が光ってメッセージが送られてきた。「デヴィッド・ボウイが死んだ」――内容はどれも似たようなものだったけれど、この1年ずっと恐れていたことだった。妙なことに「なんてこった」と思いつつ、また眠りについた。(その前の晩にホーリーホーリーのコンサートで疲れきっていたんだ)僕のルームメイト、サックス担当のテリー・エドワーズが朝の7時ごろに「トニー、恐ろしいことが起こったよ」と、ささやきながら僕を起こしてくれた。数分後にウッディー・ウッドマンジーが部屋に入ってきて、僕を励ましてくれようとしてくれた。僕のバンド、ホーリーホーリーはデヴィッドが末期の患者だなんて全く知らなかったんだ。僕は1年前に『★(ブラックスター)』のレコーディングについて何も話さないという契約書にサインした(必要なかったのに)。他のメンバーにとっては僕よりもずっとショックだった。メンバーはその2日前に『★(ブラックスター)』が発売されたと聞いて感激していた……僕もね。2015年から『世界を売った男』や、僕とウッディが参加したデヴィッドの名曲を演奏するトリビュートバンドをやっていた。デヴィッドに僕らがシェパード・ブッシュ・エンパイアで“The Width Of A Circle”を演奏するビデオを見せたら、それとなく僕たちのことを認めてくれた。
今この1年を振り返って、デヴィッドが亡くなったという報道があったとき、バンドメンバーと一緒にいて本当に良かったと気づいた。僕一人だったら完全に打ちひしがれていたと思う。あの日の夜、僕らは前夜にコンサートで会場に入りきれなかった人たちのために2回目のコンサートをやるよう頼まれた。僕たちはツアーを取りやめるか、この2回目のコンサートを最後にするかどうか話し合いをしなくてはならなかった。僕たちのデヴィッドへの愛と気持ち、初日の素晴らしい夜に来てくれたトロントの美しいオーディエンスのことを考えれば、正しい答えはひとつしかなかった。2回目のコンサートをやったんだけれど、全く違うコンサートになった。ウッディと僕は演奏を始める前にオーディエンスに、愛する友達の人生を一緒に祝うのがふさわしいと感じていると伝えたんだ。(個人の悲しみを四方八方にまきちらすよりもね――もちろんこの後でそうなっちゃったんだけど)もちろん一部のオーディエンスは涙をこらえ切れなかったけれど、バンドと全てのオーディエンスはともにお互いを支えあっていたよ。
でね、やっぱり悲しみは本当に大きいよ。全然コントロールできない。僕はこの1年間感情のローラーコースターにずっと乗っていたし、君たちの多くがそうだったことも知っているよ。僕はいつも自分の頭の中でデヴィッドに話しかけているんだ。まだ折り合いをつけることがとても難しい。『★(ブラックスター)』を制作したことは偶然の出来事ではなかったし、制作中は、どの瞬間もゴシック様式の大聖堂のような(壮大で神聖なという意味)ものを作っているって実感していた。制作に入った初日からとても特別なアルバムだった。デヴィッドは『ザ・ネクスト・デイ』を作っているときは本当に幸せそうだったし、精力的だった。だけれど、『★(ブラックスター)』のときのデヴィッドは本当にずっとずっと力強く、ポジティブで、クリエイティビティにあふれていた。僕のチーム、バンドと、技術者、スタジオを訪ねてくれた全ての人たちはお互いにずっと瞥見しあっていたよ――これ、本当の出来事なのかな?とね。“★(ブラックスター)”と“Lazarus”がリリースされて、その後にアルバムが発表されたけど、僕らはそのとき一般の人と一緒にお祝いしていたんだよ! やっとこの事について(少しだけれど)話すことができた。デヴィッド・ボウイの新しい音源のニュースに対するお祝いが世界中で巻き起こったんだ。
もうここでやめることにするよ。デビッドが亡くなったということを受け入れる努力をする。過去365日間で怒りを含むいろんな種類の悲しみを潜り抜けてきた。もちろん、デヴィッドのスピリットは僕たちから片時も離れていないよ。僕たちは彼のような人と同じ時代に生きていられたことを幸運に思う。僕たちは彼を自分たちの目で見たし、彼が歌ったり話したりするのを聴いたし、ハグもしたし、崇拝もしてきた。僕らは毎日のように彼の存在に気づかされる。デヴィッドは生涯伝説的な存在だったし、これからも永遠に伝説的な存在でい続ける。でもデヴィッドは僕の友達でもあったんだ。彼が本当に恋しいよ。