先日アメリカで伝説のカメラマン、ミック・ロックのドキュメンタリー映画が公開された際に、ミック・ロックが「ロックの写真は、自分が撮り始めた時よりアートとして、歴史を刻むものとして、今のほうが評価されるようになった」「おかげで俺の休む暇がなくなってしまったんだけど(笑)」と語っていた。
それはその他のカメラマンにとっても同じようだ。ボブ・ディランを初期の頃に撮り続けたカメラマン、テッド・ラッセルの写真展”Ted Russell: Bob Dylan NYC 1961-1964"がNYのギャラリーSteven Kasher Galley(515 W 26th st. NY NY 10001
http://www.stevenkasher.com/exhibitions/ted-russell-bob-dylan-nyc-1961-1964)で、4月20日〜6月3日まで開催される。40点の写真の中には最近発見され、NYで初めて展示されるものもある。
これらの写真は、デビュー作を発表する直前のディランがNYに来て初めて住んでいたグリニッジビレッジのアパートなどで撮影された貴重な写真を含むものだ。が、実は1961年に撮影されてから30年間も倉庫で眠っていたという。
彼が初めてディランを撮影したのは、ディランがNYに来てライブを行うようになり、レーベルと契約を交わしたばかりの頃だったそう。当時LIFEマガジンで仕事をしていたカメラマンのラッセルは、「コロンビアレコードのパブリシストから写真を依頼されたんだ。これから人気が出るアーティストだからとね。それで、LIFEマガジンに、”大都会NYにやって来た新人フォーク・シンガーの奮闘”という記事にしたいと言ったら、あくびされて、誰もまったく興味を示してくれなかった」。当時を振り返ってNYタイムズに語っている。
https://lens.blogs.nytimes.com/2017/04/17/how-does-it-feel-to-photograph-bob-dylan-ted-russell/代わりに、Saturday Evening Postに持って行ったらみんなものすごく興味を示してくれたそう。会議室でみんなを集めてレコードをかけたら、「正しいスピードでかけてる?」と言われたのだそう。33回転、45回転、最後には78回転まで試したものの誰もディランの音楽を気に入らず、即座に却下されてしまったそうだ。
1961年、まだ様々なことが”初”だった、今となってはブレイク前のあまりに貴重な20歳のディランの写真は30年間陽の目を見なかった。その後、ラッセルは1963年、64年とLIFEマガジンのためにディランを撮影している。その時にはすでにディランは大スターとなっていたので、顔つきも随分違う。1961年当時部屋にあったギターやハーモニカの代わりにタイプライターと電話があり、恋人は出て行ってしまっていたそうだ。
ゴールデンウィークにNYに来る方、是非ギャラリーでその他の写真も見てみてください。
(中村明美)