夕暮れのホワイト・ステージでパンパンにオーディエンスを集めながら登場したのはボノボ。
アーティストとしての注目度に加えて、今回は遂にバンドセットでのアクトだということも大きい。内省的な音だからこそライブにおいて幻想的なダイナミズムを持つ、ボノボの音楽の不思議な魅力が、野外でのバンドセットによって、より全開になっていた。
エレキギターや管楽器の使い方も絶妙で、今の時代の音楽ならではの肉体性とは何かを恐ろしくビビッドに具現化した最高のパフォーマンスだった。
3年前のレッド・マーキーでの出演から、今年はグリーン・ステージのトリ前へと大きな飛躍を果たしたのは、ロード。ビートを強調した比較的シンプルなサウンドをバックに、ロングスカートのドレスにアディダスのスニーカーをナチュラルに合わせた姿で、鋭いキレのあるダンスを自由に踊りながら歌うのがメチャクチャかっこいい。しかも、フジロックとそのオーディエンスへの愛情をMCの言葉や態度で何度も表してくれる。
中盤、ステージ前方に腰掛けて歌われた最新アルバム『メロドラマ』収録の“Liability”は、歌う前のMCも含めてオーディエンスひとりひとりの心の痛みに至近距離で寄り添ってくれるように感じたし、終盤、スニーカーを脱いで裸足になり、ステージから降りてオーディエンスの手に触れながら歌う姿には、思わず涙がこぼれた。
ラスト“Green Light”での圧巻の盛り上がりまで、ワールド・トップスターのショーとしてのクオリティとひとりの女性としての自然体の魅力が何の無理もなくステージ上で両立した完璧なステージだった。
レッド・マーキーの大トリのライブアクトとして登場したのはザ・ストライプス。元々、全く年齢にそぐわない、太々しいくらいの演奏力に定評のある4人が、よりパワーもテクニックも、そして魅せ方の余裕も格段に増している。
客席はモッシュ&ダイブ続出、メンバーも観客全員を座らせて、一気にジャンプさせるなど、3日間のラストスパートの盛り上がりをステージと客席が容赦なく、けしかけ合い続ける、嵐のようなロックンロール・パーティーだった。
Do what with our hands? Thanks @fujirock_jp pic.twitter.com/9DqHltTUxW
— {alink id="6452"}The Strypes{/alink} (@The_Strypes) 2017年7月30日
そして、いよいよグリーン・ステージの大トリのビョーク。これまで数々の歴史的名ライブをこのフジで観せてきたビョークだが、今回は最新アルバム『Vulnicura』の世界観とメッセージを支えるのは、左右に配置されたストリングスと、マニピュレーターとしてステージに立ったアルカが操るサウンド、そして映像や花火の演出とのコンビネーションで表現。
それによってビョーク自身の歌と存在感の担う比重が増しているのだが、全身蛍光ピンクで、顔を薄い膜のような布で覆った衣装の強烈なインパクトも相まって、1曲目“Stonemilker”からアンコールラストの“Hyperballad”まで、トータルでビョークの肉体性そのものが巨大な幻想世界に感じられるような、あまりにも深遠な美しさを持つアクトだった。
thanks for tonight ! #björk #fujirock / photo by @Santiagofelipe pic.twitter.com/iuE2J6gsBX
— björk (@{alink id="250"}bjork{/alink}) 2017年7月30日
そんなビョークの魂の深いところに響き続ける余韻を、ひとまず吹っ飛ばすくらいの無茶苦茶楽しいステージをホワイト・ステージで展開したのがメジャー・レイザー。レゲエを始め、あらゆるジャンルの音楽とEDMを異種配合しながら今のポップ・ミュージックのど真ん中を破壊力満点で突き進む楽曲をド派手な演出、セクシーなダンサーたちのパフォーマンスと共に次々と繰り出し続ける。
“Cold Water”で始まり、“Lean On””Watch Out For This”で完全に観客のエネルギーが燃え尽きるまで、アゲ要素を絶え間なく投下し続けた、フジの伝説に残るバカ騒ぎのパーティーでバッチリ今年のフジをシメたという人も多かったはず。
(古河晋)
ゴリラズ、クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ、ザ・エックス・エックス等が出演したフジロック1日目の様子はこちらから。
エイフェックス・ツイン、LCDサウンドシステム、小沢健二などが出演した2日目の様子はこちらから。