テイラーを破り米ビルボード1位に君臨した新鋭女性ラッパー、Cardi Bとは?

テイラーを破り米ビルボード1位に君臨した新鋭女性ラッパー、Cardi Bとは?

今年6月にリリースされたメジャー・デビュー・シングル"Bodak Yellow"が米「Billboard」のチャートで1位に昇りつめた女性ラッパー、Cardi B。一見、よくあるチャート・アクションにも見えるが、女性ソロ・ラッパーが首位を獲得するのは1998年にローリン・ヒルが"Doo Wop (That Thing )"でトップとなってから19年ぶりだという。

偉業ともいうべきこの快挙を成し遂げたCardi Bとは、一体どんな人物なのか。ここでは生い立ちなども含め、現在までの彼女の歩みを振り返ってみたい。

ストリッパーからSNSを駆使して表舞台に
現在25歳のCardi Bは、治安が悪いことでも有名なニューヨークはサウス・ブロンクス出身で、その環境から貧しい生活を送っていたという。10代の頃に当時付き合っていたボーイフレンドによる暴力に悩まされながらも、大学に通い続けるためにストリッパーとして生計を立てるなど、人としての意志の強さは計り知れないものがある。

そんな厳しい状況下に置かれながらも、Instagramを中心に自身の日常生活を切り取り、過激な発言や露出写真などを投稿し続けることで瞬く間に多くのフォロワーを獲得。豊胸、豊尻など美容整形を行った過去を包み隠さずさらけ出し、コンプレックスを自分の個性としながら発信する彼女に、一般人はもちろん、セレブや女性アーティストも共感と賛同を送り始めていく。

その後、2015年に出演したアメリカのヒップホップ・ミュージックに携わる人物を追ったリアリティ番組「Love & Hip Hop:New York」にレギュラー出演。SNSから飛び出したかのような大胆な発言と行動を売りに、彼女は視聴者からさらに人気を集めることになる。

番組が終了する直前、2016年1月に単独名義としては初となる楽曲"Stripper Hoe"をリリース(2015年にレゲェ・シンガーであるシャギー“Boom Boom”のリミックスにポップカーンと共に参加した経歴もある)。そのままミックステープ『GANGSTA BITCH MUSIC VOL 1』を3月に発表してからは、短いスパンで次々と作品をリリースし、女性ソロ・ラッパーCardi Bとしていよいよ表舞台へ出ていくこととなる。

Cardi B -Stripper Hoe

"Bodak Yellow"が1位になるまで
今年1月、2枚目のミックステープ『GANGSTA BITCH MUSIC VOL 2』を公開したのち、数多くのレーベルからの争奪戦の末、2月にAtlantic Recordsとメジャー契約を結ぶ。短くも濃厚な活動の中、様々な苦悩や成功を経てリリースされたメジャー・デビュー・シングルが"Bodak Yellow"だ。

Cardi B - Bodak Yellow

同曲が多くの反響を集めた背景には、彼女自身のサクセス・ストーリーが描かれたリリックと、近年の米ヒップホップ・シーンのトレンドとも言えるダークなトラップ・ミュージックを踏襲しているところなどが挙げられる。

実際、同曲はフロリダの若手ラッパーであるコダック・ブラックの"“No Flockin"を下敷きにしており、バウンシーなベースや細かいハイハットなどベター・オブ・ベターなトラップ・ミュージックが源流として流れている。流行りに敏感なティーン世代にとどまらず、幅広いリスナーの耳にまで届く器を兼ね揃えていることが、そのサウンドとビートから聴き取ることができるはずだ。

リリックの部分では「I don't dance now, I make money moves(今はダンスをしないわ/金を動かすの)」という印象的なフレーズが、ストリップ時代を回想しながらも「今は金を動かす立場にいる」と力強くフロウされる。成功を夢見て、日々困窮や重圧と戦う現代の人々にとって、彼女が歌うこの"Bodak Yellow"は憧れでもあり目標となり得ているのかもしれない。

チャート1位の影響
リリース初週こそ85位だったが、そこから右肩上がりで少しずつ順位を上げていき、チャートインから10週目にして成し遂げたのが、女性ソロ・ラッパーとして19年ぶりとなる偉業だ。しかも同曲は、それまで3週連続で首位を守っていたテイラー・スウィフト"Look What You Made Me Do"を退けての1位となったことも話題となっている。Instagramに投稿された1位になることが決まった報告を受けて驚愕する彼女の反応からも、これがいかに特別な出来事かが伺える。


その後、首位から陥落したテイラーも彼女の1位獲得を祝福リアーナニッキー・ミナージュからの賛辞もあり、男性ラッパーが席巻しているヒップホップ・シーン、またセレブリティがひしめく芸能界でも今後要注目の存在になるかもしれない。

最近ではエミネムがフリースタイルで痛烈なトランプ批判を行ったことでも話題となった「BET Hip-Hop Awards 2017」にて「Best New Hip-Hop Artist」など5冠に輝いていたCardi B。立ち位置としてはニッキー・ミナージュなどと同等に括られるかもしれないが、次世代を担う女性ラッパーとして期待しておいて損はないはずだ。
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