尾崎世界観が『アウト×デラックス』で見せたアウトな素顔はロックアーティストとしての原動力でもあった

尾崎世界観が『アウト×デラックス』で見せたアウトな素顔はロックアーティストとしての原動力でもあった
クリープハイプの尾崎世界観が、毎週木曜にフジテレビでオンエアされている『アウト×デラックス』に出演(10/26放送回)したのを観た。その「世の中の素晴らしきアウト人たちと送る人間賛歌トークバラエティー番組」の中でマツコ・デラックスも「こんなおもしろい人だったんだ」と称賛し、番組の導入部からして「我慢できない32歳アーティスト」、「とんだアウトナイスガイ」とツカミを入れられてしまう尾崎のトークとは、いかなるものだったのか、振り返ってみたい。

まずは、ツイッターのエゴサーチで自分に向けられた納得のいかない発言を見つけると、最初に相手のアイコンを確認して「みんなでピースして星のマークを作っていたりとか、そういうときは許せるんですよ。こいつにだったら言われても痛くもかゆくもないって(尾崎)」、「つまり、こうやって星を作るようなやつを、心から馬鹿にしてるってことですね(山里亮太/南海キャンディーズ)」というやりとりである。同時通訳さながらに間の手を入れる山ちゃんとは、感性の波長が絶妙に合うようだ。

エゴサの時点でイライラが消化できないときは、ラジオ出演で発散するという。しかも、リスナーからの「最近あったイライラすることはありますか?」というメールを担保しておいて、ここぞとばかりにぶちまけるという計画的なやり口についても告白していた。

矢部浩之(ナインティナイン)が自身のエゴサについて飄々と(ピースサインを並べながら)「こんな人間ばっかりやと思って見てる」と語ったり、そもそもSNSを使わないというマツコが「あたしのことを書くって本当に時間の無駄だと思うんですけど、何とも思わないの。ここまで上がってきてから勝負しろって思うから」と大人の対応ぶりを伝えると、「じゃあこっちは、わざわざ土俵を降りてるんですね(尾崎)」、「全国大会出てるはずなのに、俺たちわざわざ地方予選までいくじゃん(山里)」と、2人で苦笑いしている。

その後も、日々のイライラエピソードの数々が尾崎の口から語られたのだけれど、要約すると、音や清潔感に敏感なこと(バンドメンバーが水を飲む音をかき消すために自分でギターを鳴らすらしい)と、感性のギャップや筋の通らないコミュニケーションがミックスされた時に、イライラが限界値に達してしまうということらしい。繊細な感受性ゆえに生まれる「アウト」な笑いでもあるのだが、それよりもだんだん尾崎が不憫に思えてしまう。尾崎世界観の「アウト」な一面は世間一般にとって厄介というよりもむしろ、彼自身の心の負担という点で厄介なものなのである。

やべっちが「ラジオのリスナーとか味方やもんな?」と問いかけたとき、尾崎が「ちょっとリスナーも引いてるんですよね。だからどこにも居場所がないなと思って」と答えていたのは最も顕著だった。尾崎世界観の鋭い感受性は、大多数のファンの肯定的な声よりも、少数派の否定的な声を見つけてしまう。日常の中の、些細なズレにこそ目一杯フォーカスしてしまう。鋭い感受性はアーティストにとって大きな武器だが、その代償として「生き難さ」を孕んでしまっているということがよく分かるだろう。

たとえば、クリープハイプの名曲“社会の窓”は、まさに愛ゆえの痛烈な批判を投げかけてくる少数派のファンの声を掬い上げ、それと全力で格闘したナンバーだった。尾崎の半自伝的小説『祐介』は、数奇で理不尽な運命を被害者目線で綴るだけではなく、主人公の自業自得と混ぜ合わせることで、痛快なスピード感を持つ感情のジェットコースターのように優れた文学性を光らせていた。まさに、今回の『アウト×デラックス』で語られていたエピソードの数々が、尾崎世界観の表現の原動力となっているのである。

僕はロックが大好きで、日々いろんなアーティストに刺激をもらったり感動させられたりしているが、ある特定のアーティストのようになりたいと思ったことが一度もない。優れたロックアーティストほど「厄介な生き難さ」を代弁してくれるものだし、憧れるべきヒーローというよりも、大きなカタルシスをもたらしてくれる生贄としての立場に身を置くからだ。極端な言い方をすれば、ヒーローとして振る舞う人は僕にとって愛すべきロックスターではない。ロックスターはどこか滑稽で、哀しいのである。

番組の中で、嬉々としてイライラエピソードをぶちまけながら項垂れて溜息をつく尾崎世界観は、まさにそれだった。たとえアウトな変わり者だと思われようが、またそれを面白がる自分がいかに残酷だろうが、地上波を通して優れたロックアーティストとしての信用を明らかにした彼に、心からの拍手を贈りたい。(小池宏和)
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