エレファントカシマシ、記念すべき50枚目のシングルが奮い立たせてくれる「再出発」への勇気

エレファントカシマシ、記念すべき50枚目のシングルが奮い立たせてくれる「再出発」への勇気
エレファントカシマシ・宮本浩次が、新曲“RESTART”のMV中で自ら断髪をし、短髪になったことは、本日発売の50th Single『RESTART / 今を歌え』がこれまでのキャリアの中でもまた1つの区切りの作品となることをも象徴している。現在、ご存知のとおりエレカシはデビュー30周年という特別なシーズンを駆け抜けている真っ最中で、3月のベスト盤リリースを皮切りに、初の47都道府県ツアー、30周年記念シングル第1弾『風と共に』リリース、それに続き第2弾となる今作と、その勢いはまだまだ失速する様子はない。

発売中の『ROCKIN'ON JAPAN』12月号に掲載されているインタビューでは、宮本自身「ミュージシャン冥利に尽きる状態」と言うほど、とても忙しい日々を送っていることを明かしている。そして今回のシングルについて「ツアーをやってる中で、それこそ夏のフェスも含めて、そういう合間に作ってる曲だから、すごいリアリティがある」と語っているように、“RESTART”と“今を歌え”はまさにバンドが絶好調な「今」の状態だからこそ生まれた楽曲だと言えよう。


“RESTART”のMVでは、夢や願望を信じて疑わない主人公のサラリーマンを演じる宮本が、頭の中で思い浮かべる「ロックスター」になった自分を表現するため、鏡の前で上裸姿になりアコギを抱えて熱唱する。私だけではないと信じたいが、音楽(特にロック)に心酔した10代の時分に、この主人公のように鏡の前で楽器を持ってポーズをとってみたり、ヘッドホンを付けてひとりエアギター大会……なんてことを経験している人は少なくはないはず。そしてこの時間だけは、本当に自分が無敵になったような心持ちだった。

そんなインパクトある映像に加え、この曲は太い音のハードロック風ギターリフも印象的。サビ入りも後ろでリフが鳴っているという新鮮なアレンジが、いい意味で歌と乖離していて、宮本の歌から滲む主人公の《やっぱり勝負をしてみたい》という切実さを強く前面に押し出しているようだ。つまり、頭の中の「ロックスター」の自分が鳴らす音に重ねて現実の自分が歌っているような立体感があり、まさに楽曲とアレンジとMVの世界観とがマッチしている。


そして2曲目“今を歌え”は、“RESTART”とは対照的なゆったりとしたフォークナンバー。MVでは髪を七三に分けた宮本演じる「ひとりの男」が休日に散歩に出かけ、ふっと眠ってしまったところで夢を見るストーリーになっている。夢の中でなかなか終わりの見えない梯子を淡々と昇っていく男、しかし辿りついた雲の上には何もない――悪夢のようだけど、これぞ人生の条理なのかもしれない。そんなシリアスさの中で《今、飛び立て 今、輝け 今、戦え 心よ》と歌うこの曲は、梯子はどこに繋がっているのだろうとか、後ろを振り返って「ああこんなに昇って来たのか、もう引き返せない」と思って不安を助長させるより、ただ今目の前にあることに目を向ければいいと教えてくれているようだ。“今を歌え”もまた、映像とセットだからこそ、より深く伝わってくるメッセージがある。

“RESTART”、“今を歌え”どちらの曲もテーマは「再出発」。先述したように今回のシングルは、30周年というアニバーサリーイヤーを駆け抜けている毎日の中だからこそ、今からだ、ここからだと自身を奮い立せる宮本の現在のスタンスが現れている。と同時に、MVにリアルなストーリー性を持たせたことで、「再出発」とは難しいものじゃないし、日常の中にそのタイミングは常にあると私たちを鼓舞してくれているようでもある。それは鏡の前でポーズをとってロックスターになりきってみたり、悪夢を見て「今を生きよう」と考えを思い直したことだったり、ちょっとしたきっかけから変われる、そんな勇気も与えてくれた。(渡邉満理奈)

エレファントカシマシ 50枚目のシングル完成――アニバーサリーイヤーに新たな自信を掴んだ宮本、絶好調な今を語る[PR]
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エレファントカシマシ 50枚目のシングル完成――アニバーサリーイヤーに新たな自信を掴んだ宮本、絶好調な今を語る
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