LiSA、ソングライター陣にシド、マイファス、BIGMAMAメンバーを迎え到達した「新領域」とは?

LiSA、ソングライター陣にシド、マイファス、BIGMAMAメンバーを迎え到達した「新領域」とは?

LiSAというアーティストが自身の才気とエモーションをこれまで以上に解き放つ進化の季節を迎えていることは、今年5月に発売された最新アルバム『LiTTLE DEViL PARADE』とその後のツアーで十分に認識しているつもりだった。
が、11月29日リリースのニューシングル『ASH』で彼女は、日々高まりつつあるこちらの期待値をあっさりと飛び越え、新たな領域へと到達してみせた。

まずは、TVアニメ『Fate/Apocrypha』第2クールのオープニングテーマとしてオンエアされている表題曲“ASH”。LiSA自身『Fate』シリーズのテーマ曲を担当するのは2011年11月の1stシングル『oath sign』(『Fate/Zero』オープニングテーマ)以来6年ぶりのこととなる。


この“ASH”でソングライター陣に迎えたのは、シドのマオ(作詞)と明希(作曲)。重轟音バンドサウンドと流麗ストリングスがグラマラスに絡み合う楽曲世界が、格段にロックとポップの訴求力を増したLiSAの「今」とせめぎ合って、ダイナミックな歌の奔流を描き出している。

LiSA自身も詞曲を手掛けるアーティストではあるのだが、楽曲や歌詞、つまり「何を」表現するかという点よりもむしろ、自他の区別に関係なく、詞曲をその鮮烈な歌によって「どう」咲き誇らせていくか――という点において、今のLiSAが発揮するバイタリティは圧倒的だ。
そして、この“ASH”でLiSAは、マオ&明希の編み上げる激しさや妖気と完全に共鳴することによって、さながら歌の化身の如き迫力を獲得するに至っているのである。

なお、今作は“ASH”が表題曲ではあるが、カップリングとして収録された2曲も、いずれもリード曲ばりの存在感を放っている。
作詞をLiSA自身が手掛け、作曲・編曲にMY FIRST STORY・Shoを擁したM2:“罪人”。《乱れた弾丸みたいな想い ほら だんだん引き裂いてく愛情/わかってる そんなの わかってるよ》というサビで突き上げる紅蓮の衝動が、ラウド&アグレッシブな音像と渾然一体となって、圧巻のロック絵巻を展開してみせている。ラスサビで聴かせる渾身の絶唱は、このスペシャルなコラボをLiSAが全身で謳歌していることを如実に物語っている。
さらに、金井政人(BIGMAMA)が作詞、小南泰葉が作曲を手掛けたM3:“ONLY≠LONELY”。アメリカの女性ロックシンガーを彷彿とさせるような、アコースティックギター主体の爽快なミドルナンバー越しに、《君の味方ならここにいるよ》と聴く者に歌いかけるLiSAの声は、どこまでも深く豊潤な包容力に満ちて響いてくる。

全身全霊傾けてメロディと響き合うことで、現実を超えた飛翔力とスケール感を体現する――そんな「シンガーという生き方」を、LiSAはまさに今、途方もない高次元へと高めつつある。
「人と違う自分」を音楽で愛し祝福してみせた『LiTTLE DEViL PARADE』は、「人と違う自分」を「最大の個性」と再定義する重要なトライアルだったのだろう。そして、そこで全開放された彼女の歌のスピリットは、なおも留まることなく加速し続けている――ということを、この『ASH』はダイレクトに伝えてくるのである。(高橋智樹)
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