ONE OK ROCKが「渚園」ライブに刻んだロックの絶景が教えてくれること

ONE OK ROCKが「渚園」ライブに刻んだロックの絶景が教えてくれること - 『ONE OK ROCK 2016 SPECIAL LIVE IN NAGISAEN』『ONE OK ROCK 2016 SPECIAL LIVE IN NAGISAEN』
「この光景は決して当たり前ではありません。諦めずに走り続けて、そしていろんなことを乗り越えた上で見れる景色だと思ってます。でも、この景色は、僕らにとって、まだまだ通過点に過ぎません」

2016年9月10・11日の2日間で計11万人が静岡・渚園に集結した「ONE OK ROCK 2016 SPECIAL LIVE IN NAGISAEN」。実際に僕が観た2日目=9月11日の公演で、オールスタンディング5万5000人のオーディエンスを前に力強い宣誓の如く突き上げられたTaka(Vo)のMCを、改めてこの映像作品で目の当たりにして、抑え難く胸が震えた。

ご存知の通り、ONE OK ROCKは3月31日から大阪・東京・名古屋・福岡のドーム会場を巡る巨大ツアー「ONE OK ROCK 2018 AMBITIONS JAPAN DOME TOUR」を開催することがアナウンスされている。ロックの核心を極限までソリッドに研ぎ澄ませ鍛え上げることで、観る者すべての夢やロマンやエモーションと響き合ってきた彼らの表現は、あの渚園での壮大なロックの絶景までも「通過点」として、見果てぬ地平のその先へと進化し続けている――そんな彼らの一貫したアティテュードを、今作はどこまでも明確に伝えてくるのだ。

この作品は、5万5000人の歌声や歓声とともにONE OK ROCKの音楽が至上の熱狂空間を描き出したステージの模様を記録した「ライブ映像作品」であると同時に、開演の瞬間までのTaka、Toru(G)、Ryota(B)、Tomoya(Dr)の表情をつぶさに追った「ライブドキュメント」でもある。
さらに、今作にはもうひとつ重要なポイントがある。彼らにとっての進化作であり最高傑作であるアルバム『Ambitions』の制作過程のドキュメンタリー「Recording Documentary of Ambitions」を「DISC2」として収録していることだ。

渚園のステージで“Taking Off”を演奏する前、Takaは「俺らが(日本で)ワンマンライブやってなかった間に、アメリカで作った新曲です!」と曲紹介している。
「SPECIAL LIVE IN NAGISAEN」が前年(2015年)9月以来約1年ぶりの国内ワンマンライブとなったONE OK ROCK。その間、北米(2015年9〜11月)〜ヨーロッパ(同12月)〜アジア(2016年1月)〜ヨーロッパ(同5〜6月)と海外ツアー歴戦生活を送る中、2016年の2〜5月に彼らはアメリカでアルバムのレコーディングに臨んでいた。その様子が、Takaの自撮り動画やプロデューサー陣とのディスカッション映像まで、「DISC2」には事細かに収められている。

「ONE OK ROCKが今、さらに次のステップに行こうとしている段階なのではないか」(Taka)というイメージを現実にしていくために、数多くの切磋琢磨と取捨選択を繰り返し、日々楽曲をアップデートしてアレンジを磨き上げ、本格的なアメリカでの活動に向けてフュエルド・バイ・ラーメン(海外での所属レーベル)との協議を繰り返し……といったハードスケジュールにさすがに疲弊していくTakaの表情や、新たなステージへ向けて試行錯誤するメンバーの佇まいを観ていると、あたかもバンドの劇的な進化をすぐそばで体験しているかのような錯覚すら覚える。
彼らが『Ambitions』で獲得した新次元のロックは「結果的にそうなった」ものでは決してなく、4人の不屈の意志が引き寄せた必然そのものである――ということを、このドキュメンタリー映像は如実に物語っている。

ONE OK ROCKが日本で行った金字塔的ライブ「SPECIAL LIVE IN NAGISAEN」と、その直前にアメリカで経験した「前進のための苦闘の日々」。そのふたつが重なることで、ONE OK ROCKというバンドの現在までに至る道筋と「未来」への想いがよりくっきりと浮かび上がってくる。そんな作品だ。(高橋智樹)
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