ブライアン・セッツァー・オーケストラ @ 東京ドームシティホールのライブレポート公開!

ブライアン・セッツァー・オーケストラ @ 東京ドームシティホールのライブレポート公開! - Photo by Tony NelsonPhoto by Tony Nelson

現在ジャパン・ツアーを開催中のブライアン・セッツァー・オーケストラだが、1月29日(月)に東京ドームシティホールで行われた東京公演初日のライブレポートが公開された。

レポートはこちら。



近年は4〜5年スパンでの来日を実現しており、結成25周年の節目としては4年振りの来日公演となったブライアン・セッツァー・オーケストラ(BSO)。総勢19人編成となり、待望のツアー初日を無事スタートさせたBSOのバンマスにして、ロカビリー・ミュージックを基調としながらもそのジャンルだけに留まらない当代随一のエンターテイナー、それがブライアン・セッツァーだ。

初日の会場となった東京ドームシティホール。文字通り身が凍るほどの記録的な寒さが続いていたこの日までの東京。にもかかわらず、熱心なファンは開場時刻前から長蛇の列を成す。午後6時15分の開場時間を過ぎるとダークなコートに身を包むオーディエンスたちが続々とホールへと吸い込まれる。入口付近に設置されたグレッチ展示コーナーでは、写真に撮ろうとスマホを向けるファンが殺到。そこにあるのはピカピカなファルコン。そのゴージャスさはアメ車で言えば、さながらキャデラック。

来日前のインタビューで語っていた通り、新しい衣装、新しいバックドロップ(背景幕)、新しいバンドスタンド、新曲など、新たな演出がたくさん盛り込まれたという刺激的なパフォーマンスに期待が高まる。

オープニングSEはデューク・エリントン“Take the A Train”。ピアノ旋律の中、オーケストラの面々に続きステージに現れたブライアン。数多くのバージョンを輩出した1940年に生まれたスイングジャズ“Pennsylvania 6-5000”でBSOの幕が開いた。

オーケストラピットのBSOロゴが目映く輝き、響き渡るギターの立ち上がりは、アンサンブルのひとつと言わんばかりの馴染みようだ。メインで使用するギターはオレンジの定番グレッチ6120 Nashville(1959年製)。早いリズムの“Hoodoo Voodoo Doll”から矢継ぎ早に“This Cat's On A Hot Tin Roof”へ。

一瞬、アンプのつまみを調整し、「ハロー、トキオ!」のかけ声と共に、軽いウォームアップのごときソロギターから、定番の“Stray Cat Strut”へ。ウッドベースのタイトなこと。実に重厚だ。印象強いベースラインをより強調しながら、実に気負いのないプレイにため息が漏れる“Runaway Boys”。ギターで忠実にベースラインを弾きながらのボーカルがどれほどの高いハードルであるか。


オーディエンスを煽りながら始まった“Gene & Eddie”では、以前から変わらず、リフのフレーズに様々なパターンを織り込む演出がたまらない。そのそつないクールなアイディアに凜としたプロフェッショナルさを感じ入るのだった。

“Sleepwalk”における複音の使い方はまさに秀逸だ。ときにジェフ・ベックのフレイバーにも通ずるフィンガリング、そしてトレモロの使い方が極まり、美しい。余談だが、サント&ジョニーによる原曲がピーター・グリーンのインストゥルメンタル曲“Albatross”に影響を与えたことは俄に知られている。

ギターを黒のグレッチに持ち変え、ジャケットを脱いだブライアン。黒のグレッチも#6120だが、2015年製の比較的新しい機種とのこと。“The Dirty Boogie”から“Jump Jive An' Wail”へ。“Jump〜”はルイ・プリによる1956年のジャズ・スイング・ソング。BSOの1998年のアルバム『ダーティー・ブギ』で同曲をカバーし、翌1999年に第41回グラミー賞を受賞した楽曲の生の迫力は正に強烈。ギターソロ同様にホーンセクションのソロまで心待ちにしてしまう、完全に“もっていかれる”佳作。続く“Rumble In Brighton”のパワーリフに突き動かされ、“Sexy,Sexy”で会場はよりホットに。

つまり全編にわたり、アドレナリン大放出となる感情に観衆を惹き込んでゆく。グレン・キャンベルが1968年に発表したシングル“Wichita Lineman ”のカバーには、個人的にふとカーペンターズのフレイバーを思い出した。そして続くのが、惜しくも昨年(2017年)亡くなってしまったトム・ペティによる名トラック“Runnin' Down A Dream”。そのロックスピリットをブライアンが継承した。


やがて予告通りの4ピース・スタイルへとシフト。グリーンのグレッチHOT ROD(2010年製)に持ちかえ、全員ヒョウ柄シャツの出立ちに(鍵盤の外観も)。ギターにおけるファズとリバーブの溶け具合がなんとも絶妙な、ジョニー・キャッシュからの“Rockabilly Boogie”には歓喜。Jimmy Lloyd(James Lloyd Logsdon)による最も有名な曲“I Got A Rocket In My Pocket”は、もはやBSOにおけるお馴染みのトラックと言っていい。
 
さらにピアノの抜けた3ピース編成で奏でる“Fishnet Stockings”で、ブライアンはチャック・ベリーばりのダックウォークを披露。モニタースピーカーに脚をかけたまま奏でる絶妙なコードソロが小気味いい。やがてオーケストラと合流し、クライマックスの“Rock This Town”へと導かれた。公演中幾度か登場するドラム・ソロもホーンセクションのソロも全てがオーケストラの花形であり山場。つまりBSOの見せ場は全編、全メンバーにわたってのものなのだ。


鳴り止まぬ拍手を経てのアンコールでは、グリーンのジャケットを身に纏い、グリーンのグレッチを抱えたブライアン。完全な組曲として構成される“Nutcracker Suite”はビッグバンドの醍醐味。壮大なアレンジを「適切にこなす」べく、いつものように譜面台に置いてあった(演奏を終えた面から)譜面をひっくり返すブライアン。そこはステージパフォーマンスのひとつとして演出されるお茶目なシーンだ。

管楽器からギターへグラデーションを引くような橋渡し的ソロがハイライトのひとつとなり背中に電気が走る。やがてコーラスの女性2人も加わり、ラストに控えるジョー・ガーランドの名曲“In The Mood”にて盤石のステージングを駆け抜けたBSOの初日は滞りなく終了。笑顔のブライアンとの再会が叶い、ホール全員が朗らかな瞬間を迎えた。
 
終わってみれば絶妙なるフィンガリングは今日も健在。立ちくらみがするほど旨味成分満載の音色で弾き倒すグレッチとバンドのアンサンブルは極まりけり。ジャンルの垣根なく多くのファンを魅了し、うるさ型ギターファンまで満遍なくノックアウトするブライアン・セッツァーの機微。このツアーは、さらにトップギアへと入っていくであろうことを安易に予感させた。

少人数のバンドと比べればその維持や継続は難しかろう中、常に前進し続けるそのミュージシャンシップに今年も脱帽だ。キング・オブ・ロケンローラーにして、6弦の宇宙を魅せ続ける凄腕ギタリストの大本命。ブライアンを聴かずしてロックンロールを語るなかれ。
米澤和幸(LotusRecords)



残るジャパン・ツアーの詳細は以下。31日の東京公演はスペシャルゲストとして布袋寅泰の出演も決定している。

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