リスナーとして、彼女のそのプリミティブな衝動を漠然と感じていながら、それが確信に変わったのは“さよならバイスタンダー”がリリースされたときだった。これは、彼女自身がファンであることを公言している羽海野チカ原作のTVアニメ『3月のライオン』のオープニングテーマだが、歌詞はその物語の主人公、零の姿に重ねて綴られながら、同時にYUKI自身が「傍観者であることから決別した」ことを表していて、どんな未来が待っていようとも自ら選んだ道を進んでいくという強い意志表明だと受け取った。《さよならバイスタンダー 僕らは歩いて行く/この道行きの最後が 天国か そこらじゃあないとしても/ただの君と笑って立っていたいよ》と、行く先が安寧の地ではなくても、恐れずに自分を表現するのだという決意、覚悟。今回のシングルコレクションには入っていないが、『さよならバイスタンダー』の後にリリースされたアルバム『まばたき』に収録された“暴れたがっている”は、その思いをさらにフィジカルに表現したような楽曲で、彼女の中にある強いエネルギーの塊に再び火がついたような力強さを感じたのだ。とにかく、現在のYUKIは「当事者」として音楽に恋をして、その思いを同じだけの熱量でリスナーにも届けたい──そんな純粋な衝動で「暴れたがっている」んだと思う。今回、新曲として収録された“I love you”で、普遍的な大きな「愛」を迷いなくシンプルに歌い上げたのも、こうした気持ちの変化からではないかと思うのだ。音楽に熱烈に恋している自分に再び正面から出会ってしまったら、もう照れたり、はぐらかしたりしている場合ではなくて、その思いをそのまま分かち合いたいと思うのは必然だと思うのだ。《巨大化した愛 分けてあげよう/散々な日も 踊りだしたくなるよ きっと》。YUKIの歌声が、私たちの音楽愛や人間愛にも再び火をつけるように響く。今回の『すてきな15才』は、ソロとして「15才」となるキャリアで迎えた「思春期」が、次の5年間で、またどのように成熟していくのか、とても楽しみになるシングルコレクションでもあった。キャリアを重ねたからこその成熟ではなくて、自分自身でさえもどこに向かうのかわからない、ワクワクする未来へ──。そういう音楽への向き合い方を選んだYUKIが、これからまたとびきり多感な「16才」〜「18才」、そして「20才」を迎える季節へと突入するのだから、目が離せそうもない。(杉浦美恵)
YUKIは再び「思春期」を迎えた――今後が楽しみになるシングルコレクション『すてきな15才』
2018.02.02 20:55
リスナーとして、彼女のそのプリミティブな衝動を漠然と感じていながら、それが確信に変わったのは“さよならバイスタンダー”がリリースされたときだった。これは、彼女自身がファンであることを公言している羽海野チカ原作のTVアニメ『3月のライオン』のオープニングテーマだが、歌詞はその物語の主人公、零の姿に重ねて綴られながら、同時にYUKI自身が「傍観者であることから決別した」ことを表していて、どんな未来が待っていようとも自ら選んだ道を進んでいくという強い意志表明だと受け取った。《さよならバイスタンダー 僕らは歩いて行く/この道行きの最後が 天国か そこらじゃあないとしても/ただの君と笑って立っていたいよ》と、行く先が安寧の地ではなくても、恐れずに自分を表現するのだという決意、覚悟。今回のシングルコレクションには入っていないが、『さよならバイスタンダー』の後にリリースされたアルバム『まばたき』に収録された“暴れたがっている”は、その思いをさらにフィジカルに表現したような楽曲で、彼女の中にある強いエネルギーの塊に再び火がついたような力強さを感じたのだ。とにかく、現在のYUKIは「当事者」として音楽に恋をして、その思いを同じだけの熱量でリスナーにも届けたい──そんな純粋な衝動で「暴れたがっている」んだと思う。今回、新曲として収録された“I love you”で、普遍的な大きな「愛」を迷いなくシンプルに歌い上げたのも、こうした気持ちの変化からではないかと思うのだ。音楽に熱烈に恋している自分に再び正面から出会ってしまったら、もう照れたり、はぐらかしたりしている場合ではなくて、その思いをそのまま分かち合いたいと思うのは必然だと思うのだ。《巨大化した愛 分けてあげよう/散々な日も 踊りだしたくなるよ きっと》。YUKIの歌声が、私たちの音楽愛や人間愛にも再び火をつけるように響く。今回の『すてきな15才』は、ソロとして「15才」となるキャリアで迎えた「思春期」が、次の5年間で、またどのように成熟していくのか、とても楽しみになるシングルコレクションでもあった。キャリアを重ねたからこその成熟ではなくて、自分自身でさえもどこに向かうのかわからない、ワクワクする未来へ──。そういう音楽への向き合い方を選んだYUKIが、これからまたとびきり多感な「16才」〜「18才」、そして「20才」を迎える季節へと突入するのだから、目が離せそうもない。(杉浦美恵)