YUKIは再び「思春期」を迎えた――今後が楽しみになるシングルコレクション『すてきな15才』

YUKIは再び「思春期」を迎えた――今後が楽しみになるシングルコレクション『すてきな15才』 - 『すてきな15才』『すてきな15才』
2017年2月6日からYUKIはソロデビュー15周年のアニバーサリーイヤーに突入した。同年2月には、羽海野チカ原作のTVアニメ『3月のライオン』のオープニングテーマ“さよならバイスタンダー”をシングルとしてリリース、3月には約2年ぶりとなったオリジナルアルバム『まばたき』を発売。4月からスタートした、そのアルバムを引っ提げての全国ツアーも大盛況だった。

そして2018年、アグレッシブなアニバーサリーイヤーの締めくくりは、5周年ごとの恒例リリースともなったシングルコレクション『すてきな15才』である。YUKIがシングル『the end of shite』でソロデビューをしたのが2002年。そこからデビュー5周年となる2007年には『five-star』、10周年の2012年には『POWERS OF TEN』と、それぞれに、その期間のシングル曲を中心に収めたベストアルバムをリリースしてきた。今回は、2012年からの5年間で発表されたシングル曲に、新曲3曲を加え、さらには歌詞提供曲“手紙(デモ)”の音源も収録し、全15曲を収録したシングルコレクションとなっている。

収録されたシングル曲はどれもすぐにメロディが頭に浮かぶものばかりだが、改めてこの5年間は、TVアニメ、映画、ドラマからCMに至るまで、数々の映像作品のために書き下ろされた楽曲が多かったことに気づく。そして、今回のシングルコレクションでその流れを追って聴いていくと、YUKIがそうしたタイアップ作品から何かを受け取り、楽曲へとフィードバックさせていく中で、音楽へのプリミティブな衝動のようなものを再び強く実感していったことを感じ取れるように思う。ソロデビューから数えて「15才」というタイミングに合致するように、彼女は再び「思春期」を迎えた──つまりは音楽や人生にワクワクしたり、その分傷ついたり、時々転んだり、だからこそ輝いたり、そんなプリミティブで怖いもの知らずな衝動を「取り戻そうとした」わけでは決してなく、彼女はこの5年の活動の中で、図らずも「取り戻してしまった」のだと思う。それが、この作品に収められた、2012年からのシングル曲の変遷でよくわかる。

今作2曲目に収められた、TVアニメ『坂道のアポロン』オープニングテーマである“坂道のメロディ”からして、すでにその萌芽は感じられる。菅野よう子の作り上げた、心がはやるような、急き立てられるような美しいメロディにYUKI自身が恋してしまったような楽曲だ。感応的に音楽やメロディにときめく気持ちを、そのままストレートに歌詞に記したこの歌は、まさに音楽に対するフレッシュな「思春期」が表現されている。表現しようとして表現したというより、あふれ出てしまったという感じ。《行かないで 耳に絡みついてもう離れないよ/このメロディは もう恋みたいだ/ああ》。この最後の歌詞がすべてを表している。


リスナーとして、彼女のそのプリミティブな衝動を漠然と感じていながら、それが確信に変わったのは“さよならバイスタンダー”がリリースされたときだった。これは、彼女自身がファンであることを公言している羽海野チカ原作のTVアニメ『3月のライオン』のオープニングテーマだが、歌詞はその物語の主人公、零の姿に重ねて綴られながら、同時にYUKI自身が「傍観者であることから決別した」ことを表していて、どんな未来が待っていようとも自ら選んだ道を進んでいくという強い意志表明だと受け取った。《さよならバイスタンダー 僕らは歩いて行く/この道行きの最後が 天国か そこらじゃあないとしても/ただの君と笑って立っていたいよ》と、行く先が安寧の地ではなくても、恐れずに自分を表現するのだという決意、覚悟。今回のシングルコレクションには入っていないが、『さよならバイスタンダー』の後にリリースされたアルバム『まばたき』に収録された“暴れたがっている”は、その思いをさらにフィジカルに表現したような楽曲で、彼女の中にある強いエネルギーの塊に再び火がついたような力強さを感じたのだ。とにかく、現在のYUKIは「当事者」として音楽に恋をして、その思いを同じだけの熱量でリスナーにも届けたい──そんな純粋な衝動で「暴れたがっている」んだと思う。

今回、新曲として収録された“I love you”で、普遍的な大きな「愛」を迷いなくシンプルに歌い上げたのも、こうした気持ちの変化からではないかと思うのだ。音楽に熱烈に恋している自分に再び正面から出会ってしまったら、もう照れたり、はぐらかしたりしている場合ではなくて、その思いをそのまま分かち合いたいと思うのは必然だと思うのだ。《巨大化した愛 分けてあげよう/散々な日も 踊りだしたくなるよ きっと》。YUKIの歌声が、私たちの音楽愛や人間愛にも再び火をつけるように響く。

今回の『すてきな15才』は、ソロとして「15才」となるキャリアで迎えた「思春期」が、次の5年間で、またどのように成熟していくのか、とても楽しみになるシングルコレクションでもあった。キャリアを重ねたからこその成熟ではなくて、自分自身でさえもどこに向かうのかわからない、ワクワクする未来へ──。そういう音楽への向き合い方を選んだYUKIが、これからまたとびきり多感な「16才」〜「18才」、そして「20才」を迎える季節へと突入するのだから、目が離せそうもない。(杉浦美恵)
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