BiSHがゲリラリリースした『NON TiE-UP』で炸裂した全開放のBiSHについて

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  • BiSHがゲリラリリースした『NON TiE-UP』で炸裂した全開放のBiSHについて - 『NON TiE-UP』

    『NON TiE-UP』

  • BiSHがゲリラリリースした『NON TiE-UP』で炸裂した全開放のBiSHについて - 『Life is beautiful / HiDE the BLUE』

    『Life is beautiful / HiDE the BLUE』

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BiSHの最新シングル『Life is beautiful / HiDE the BLUE』の店着日に、何の事前告知もなしにシングル『NON TiE-UP』もリリースされたのは、痛快だった。横浜アリーナ公演の大成功、CM出演、大型タイアップ、続々と決定している音楽フェスへの出演など、華々しい出来事が続いている中、このような強烈なインパクトを放つ作品が投下されたというのは、BiSHの奥深さを幅広い人々に感じてもらうために、実に効果的だったと思う。

清掃員(BiSHファンの愛称)だったら、おそらく心当たりがあると思うが――このグループの魅力を誰かに語ろうとすると、ネガティブなニュアンスにも捉えられかねない言葉もいろいろ並べないことには、説明不足な感覚が残ってしまう。「最近BiSHを知ったんだけど、かっこいいね」と友人に言われて、心底嬉しく思いつつも、「でも、ヤバい人たちなんだよ。ブッ飛んだ女の子たちだし、何をしでかすかわからないところがあるし、下ネタも全然OKだし、シュールなコントをいきなりライブ中にやり始めたりするし、へんてこりんなメイクとかをすることもあるし、ウンコまみれのMVだってあるんだぜ」とか、丁寧に説明している内に、だんだんと彼女たちの悪口を言っているような気がしてきたことがある清掃員は、おそらく僕だけではあるまい。

このような現象が生まれるのは、ここ最近のBiSHの快進撃に伴って、「一面ばかりがクローズアップされ過ぎている」という違和感が、我々清掃員の中で募っているからなのだと思う。『ミュージックステーション』に初出演した際に歌って、音楽性の素晴らしさがたくさんの視聴者に伝わることに繋がった“プロミスザスター”。テレビアニメ『ブラッククローバー』第2クールのオープニングテーマとなり、子供たちの心も掴んだに違いない“PAiNT it BLACK”。《愛してる愛してるよダーリン》という優しい質感のフレーズが印象的なラブソング“Life is beautiful”。甘酸っぱい青春の風景と爽やかな疾走感に満ちている“HiDE the BLUE”……などなど、絶好調ぶりをさらに後押ししている最近の曲たちを聴いて、「やっぱBiSHっていいなあ」と感じる一方、「シングルは、このまま王道路線を進み続けるのかなあ? アルバムでは相変わらずブッ飛んだ曲があるし、ライブでのあの娘たちは相変わらず奇天烈だから、まあいいんだけどさ」と、一抹の寂しさを抱きながら過ごしていた清掃員は、少なからずいたのではないだろうか。

そんなモヤモヤを粉砕してくれたのが他でもない、ゲリラリリースされた『NON TiE-UP』だ。まず、表題曲“NON TiE-UP”が、惚れ惚れするほど良い。スタートして30秒ちょっと過ぎたところで飛び出す《おっぱい舐めてろ チンコシコってろ》というフレーズを聴いた瞬間、胸が熱くなった。この曲を聴いて思い浮かんだのが、BiSHの初期の名曲“OTNK”。あの曲は、なんかいい感じの言葉の響きが連発される歌詞なのだが、なんだか卑猥なことを言っているようにも聞こえてくる……という恐ろしい魔力を帯びていた。“OTNK”が生まれてから約3年が経ち、今回の“NON TiE-UP”は、思いっきりハッキリとエッチな言葉を叫んでいるというのは、感慨深いものがある。そして、YouTubeにアップロードされたMVも観て、僕の抱いていた喜びはますます膨らんだ。《おっぱい舐めてろ チンコシコってろ》の部分の振り付けが非常に挑発的だから、すぐに真似をしたくなるし、ハリウッド超大作のような近未来的なイメージのビジュアルの数々が文句なしにかっこいい。指揮者のような動きをするモモコグミカンパニーを中心として、アイナ・ジ・エンド、セントチヒロ・チッチ、ハシヤスメ・アツコ、リンリン、アユニ・Dが聖歌隊のように両手をお腹の前で組み合わせて身体を揺らすダンスは、かなり抑制された動きのものとなっているが、不思議とゾクゾクするほどのドラマチックさを放っている。個人的に非常に気に入ったのは、2分54秒辺りからのハシヤスメだ。歌声を神々しく響かせながらゆっくりと開かれた彼女の両腕が、やがて美しいWの形となる様が妙に好きになってしまい、「Wの女」と勝手に命名しつつ、繰り返し観ながら楽しんでいる。


そして、『NON TiE-UP』のカップリング曲“しゃ!!は!!ぬあ!!あぁ。死!!いてぇ。”のアクの強さも絶大だ。聴いていると頭の中が錯乱してくる変拍子、何かに取り憑かれたかのような狂躁状態で旋律を奏でるピアノ、不敵なムードを湛えた歌声がグイグイと迫って来る。サウンド面のアバンギャルド具合という点で言うならば、これはBiSH史上ダントツのナンバーワンだろう。活動を重ねる中で生まれているジレンマを描いているようにも解釈できそうな歌詞も興味深い。この曲にも、「楽器を持たないパンクバンド」であるBiSHの核にあるパンクスピリットが濃厚に渦巻いているのを感じる。

このような2曲が収録されているシングル『NON TiE-UP』が起爆剤となって、BiSHが気になり始めている人々の興味がさらに深まっていったら、とても嬉しい。これまでにリリースされたアルバムに入っている様々な曲を聴いたり、ワンマンライブに足を運んだりすることによって、本格的にハマってしまうのがもちろん一番理想的だが、手始めとしてはYouTubeにアップロードされているMVをいろいろ観てもらうのも良いだろう。このテキストの最初の辺りで少し触れた「ウンコまみれのMV」とは、“BiSH-星が瞬く夜に-”。メンバーたちがカニのような謎の巨大生物と突然戦うことになる“OTNK”のMVも意味不明で秀逸なのでオススメしたい。漂っている凄まじいB級感と、“NON TiE-UP”のMVのスタイリッシュな仕上がりのコントラストを楽しむのも、なかなかオツだ。メンバーたちが凶器を振り回しながら墓地、浅草、秋葉原などで暴れまわるメジャーデビュー曲“DEADMAN”のMVも、なかなかイカれた人たちの群舞となっている。そんな具合にいろいろチェックし始めたら、そこのあなたもいつの間にやら立派な清掃員になってしまっていると思う。(田中大)

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