●現段階で本作におけるビジュアル・アートはほとんど明らかになっていませんが、あなたは新作でアニメーションの新展開を考えていると言っていましたよね。実際にそれはどんなコンセプトのものになっていますか?
「新展開は毎回そうだよ。音楽的にも視覚的にもね。そうしないと自分達が面白くないからさ。もしデーモンが1stアルバムと同じような音楽を作り続けて僕が同じようなビジュアルを作り続けてたら、ゴリラズはここまで人気が出てないと思うし、僕らも同じことをやり続けて退屈して疲れ切ってただろうしね。
色々実験できる仕事で本当によかったと思う。もし毎日同じことをやらなきゃいけないとしたら発狂してると思う。常に変わり続けて前に進む必要があるんだ。だからビジュアル的にも音楽的にも毎回新展開だよ」
世界は魔法を失ってしまった。僕達の仕事は魔法を蘇らせることなんだ。
●新キャラクターの「エース」が登場するそうですが、彼はどんな人物なんですか?
「すごーく悪いやつ。マードックの友達なんだよ。マードックは刑務所に入ってて、ゴリラズがどうなってるかちょっと心配してるわけ。2Dが自分のアルバム作ったりしてるしさ。だからエースに自分の代わりにバンドに入って見張っとくように頼んだんだ。つまり半分マードックのスパイみたいなもんなんだけど、代役としてもかなり優秀だよ」
●オール・ポイント・イーストで話題になったポスターに書かれていた「NO MORE UNICORNS ANYMORE」の意味とは? 新作とどうリンクするメッセージなんですか?
「あのスローガンには全部、何らかの意味がある。NO MORE UNICORNS ANYMOREについて言うと、ユニコーンってマジカルな神話上の生き物だよね。希望を運んでくるような存在でさ。でもノー・モア・ユニコーン、つまり世界は魔法を失ってしまったということ。まあ、あくまで今のところはね。それで僕達の仕事は魔法を蘇らせることなんだ」
●ゴリラズというバーチャル覆面プロジェクトの意義や役割は、時代とともにどんどん変化していきましたよね。時代を先取りしてきたアニメ・バンドというゴリラズのフォーマットは2010年代後半の今、むしろ驚くほど時代にフィットしています。
「そう、時代が追いついたんだ(笑)」
残念なことに、いいバンドがいた時代はある意味過ぎ去ってしまったよね。だからこそ僕らはあのバンドのメンバー達を発明したわけ(笑)。その方が面白いからさ。
●まさに。しかも現実的で直接的なメッセージを投げかける上でむしろ強力な武器になっているとも思います。その変化は歓迎すべきものですか? また、アート・プロジェクトとしてのゴリラズの意義は、あなたの中で変化しましたか?
「元々の目的は、アーティストとしての自分達がクリエイティブに実験できる場を作ることだったわけだよ。今もその目的は変わってないね。実験すること、コラボレートすることは、止められないから。このバンドは常にテクノロジーと共に歩んできて、人からは最先端とか言われるけど、でも別にそこは興味ないというか、別に最先端のテクノロジーを駆使するとかはどうでもよくってさ。
むしろちょっと後戻りしてレトロ、アナログにしてみることに興味があるな。最先端のテクノロジーを使ったからと言ってより優れたアーティストになれるわけじゃないからさ。結局はいい曲を書いていいビデオを作って面白いバンドであることの方が大事だからね。
残念なことに、いいバンドがいた時代……たとえばバンドに4人メンバーがいたら4人とも面白くてずけずけ物を言ってカリスマ性があってという、そういう時代はある意味過ぎ去ってしまったよね。だからこそ僕らはあのバンドのメンバー達を発明したわけ(笑)。その方が面白いからさ」
デーモン・アルバーンとジェイミー・ヒューレットへのインタビューは現在発売中の『ロッキング・オン』8月号に掲載中です。
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