ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー @ 英バービカン・ホールでのライブレポート公開!

アルバムでは「これにて終了、ピリオド」に当たる“Last Known Image of a Song”の後に、しかしOPNはありがとうの挨拶に続き、ビル・フェイの“Never Ending Happening”を歌った。本で言うところの「後書き」に当たるポジションに置かれたこの曲は、70年代に2枚の素晴らしい英プログレ・フォーク・アルバムを残したものの長らくカルト化していたビル・フェイ(ジム・オルーク、ジェフ・トゥイーディを始めファンは多い)のカムバック作『ライフ・イズ・ピープル』(2012年)収録。

OPNもインタビューでビル・フェイ好きを表明していたとはいえ、カバーをやるとは思ってもいなかった。しかし、「決して終わることなく起こり続ける事象」――断崖に打ち寄せる波、風に運ばれる種子、生まれ続ける生命、そして戦争や飢餓のもたらす苦痛と恐怖――という自然/人間界で繰り返されるサイクルと、自らもその雄大な物語の一部であることに感嘆し感謝するこの曲のピュアなセンチメントは、「人類の時代」は終わりに近づいているのではないか? との暗澹とした諦めや「黒い(雪ならぬ)雨」は避けられないという感覚に対する、OPNなりのアンチテーゼ〜ささやかな抵抗ではないかと思った(とはいえ、OPNはヴォコーダー越しのロボット声で歌っていた。ゆえに見方を変えれば、それは『エイジ・オブ』のコンセプトである「文明が崩壊した後に残されたAIが人間の営みの記録/記憶を眺めている」という図式にも当てはまるのだが)。

ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー @ 英バービカン・ホールでのライブレポート公開! - pic by Wunmi Obinudopic by Wunmi Obinudo

アンコールで“Child Of Rage”、そして子供合唱団を思わせるコーラスが美しい“Chrome Country”と続いたことで、子供=未来=希望というイメージも掻き立てられた――が、次々に皮を脱ぎ捨て、皮の残骸を踏みにじって新たな皮を生み出すことこそ加速された現在のカルチャーの強みだとしたら、この晩OPNが提示した思いも2ヶ月後には様々な作用を受けて変化・推移するのかもしれない。だが少なくとも、「MYRIAD」として一時的に固定されたこのショウの枠組み=骨格と、そこで生じるユニークな聴体験は日本でも味わえるはずだ。OPNが「1年間にわたる長期世界ツアー」めいたものをまずやらない、前進し続けるアーティストであることを考えても、このラインナップによる『エイジ・オブ』のコンセプチュアルなショウというフェーズはこれが最初で最後だろう。OPNの過去10年強の音楽的な試み・思索の変遷を凝縮したとも言えるその内容は、今しか体験できない。9月の来日は必見だ。(坂本麻里子)



ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーは7月27日 (金) にデジタルEP『The Station』と12インチEP『We'll Take It』を同時リリースすることが決定している

9月の来日公演の詳細は以下より。

ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー、来日公演が決定! 5/25には新作をリリース
ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーが来日公演を行うことが発表となった。 今回の来日は、即完となったニューヨーク公演に続き、ロンドン公演と共に決定した公演となる。 さらに、これに合わせて3年ぶりのニュー・アルバム『Age Of』が5月25日に日本先行リリースされることも発表となっ…
ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー、来日公演が決定! 5/25には新作をリリース

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ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー @ 英バービカン・ホールでのライブレポート公開! - 『rockin'on』2018年7月号『rockin'on』2018年7月号
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