サザンオールスターズが『紅白』で見せた「時代を刻み、次の世代へと手渡してゆく」ということ

サザンオールスターズが『紅白』で見せた「時代を刻み、次の世代へと手渡してゆく」ということ
デビュー40周年の大晦日を、『第69回NHK紅白歌合戦』の「紅組・白組を超えたスペシャルパフォーマンス」という最高のクライマックスで締めくくったサザンオールスターズ。“勝手にシンドバッド”で桑田佳祐(Vo・G)は「サブちゃーんっ!!」と叫び、はたまたユーミン(松任谷由実)が桑田の頬にキスをして共に情熱的なダンスを繰り広げながら歌うという、新進気鋭から大ベテランまでそれぞれに物語を持ち寄った『紅白』の舞台にも相応しい、豪華絢爛で歓喜に満ちたクライマックスをもたらしていた。

2018年、サザンは映画主題歌の配信シングル“闘う戦士(もの)たちへ愛を込めて”をリリースすると、デビュー記念日の6月25日、翌26日にNHKホールで「キックオフライブ 2018 『ちょっとエッチなラララのおじさん』」を開催。このとき、2019年の全国ツアーが発表された。2018年内の一般向けライブはNHKホールの2日間とROCK IN JAPAN FESTIVAL 2018出演(4日間の大トリ。フェス出演は15年ぶり)のみだったわけで、あらためて『紅白』で多くの人々がサザンを目の当たりにすることができた意味は大きい。ちなみに、RIJF2018のGRASS STAGEでサザンと共に時代を越える普遍的な名曲の数々を届けた大ベテランと言えば、それは他でもない、RIJF初登場の松任谷由実であった。

“希望の轍”で始まったサザンのパフォーマンスはアップテンポで力強く、来場者とのコール&レスポンスから傾れ込む“勝手にシンドバッド”の狂騒はやはりとんでもないものだった。北島三郎へのリスペクトを溢れ出させていた桑田だが、これは『紅白』の約一月前に横浜で繰り広げたライブ「桑田佳祐 Act Against AIDS 2018『平成三十年度! 第三回ひとり紅白歌合戦』」でサブちゃんを「日本国民のゴッドファーザー、日本のジェームス・ブラウン」と呼んで“与作”をカバーしていたことからも思い入れの深さが窺える。

それにしても、サザンの選曲はなかなか興味深いものがあった。確かに“希望の轍”は彼らの代表曲のひとつだし、原由子のピアノイントロが奏でられただけで会場が沸いていたけれども、そもそもはサントラ盤『稲村ジェーン』の収録曲であり、細かいことを言えばもともとの音源は「稲村オーケストラ」名義の作品である。年越しを目前に、未来を見据えた希望の歌としてこの曲が届けられたと言われれば確かにそうなのだろうが、むしろ1990年(平成2年)発表でシングルカットもされていないこの曲は、真の意味で「平成の流行歌」として親しまれてきた経緯そのものが重要なのではないだろうか。

そして“勝手にシンドバッド”である。音楽番組に初めて歌詞テロップを導入させたと言われる、このアップリフティングでファンキーなサンバ・ホッキ(Samba Rock)調のこのナンバーは、デビュー40周年の『紅白』出演でも変わらぬ、圧倒的な熱狂を巻き起こしていた。「40年の歳月を経てデビュー曲が初めて『紅白』で披露される」事実は、すべてのアーティストや音楽ファンにとっても、計り知れないほど大きな希望をもたらしているに違いない。

近年は、サザンや桑田ソロとして特別枠で『紅白』出演が果たされているけれども、彼らは長きに渡って毎年のように年越しライブを行ってきた経緯があり、『紅白』への出演回数は決して多くはない。平成という時代への批評、『紅白歌合戦』という国民的音楽番組への批評、そして日本を代表するアーティストとしての自己批評が噛み合ったときに、今回の『紅白』を締めくくるデビュー40周年のサザンのパフォーマンスは実現したのだと思う。それは時流に押し流されることなく、時代を刻み、時代を次の世代へと手渡してゆくということだ。

『紅白』出演の翌日、1月1日には、桑田佳祐 & The Pin Boysによるシングル『レッツゴーボウリング』がリリースされた。「KUWATA CUP 2019」テーマ曲である軽快でトロピカルなボウリング賛歌は、桑田個人の思い入れに満ちている。サザンの『紅白』出演とはギャップが感じられるかもしれないが、これもまた「時流に押し流されることなく、時代を刻み、時代を次の世代へと手渡してゆく」挑戦のひとつと言えるだろう。

またそれと時を同じくして、3月末から始まるサザンの全国ツアーのスケジュール詳細も発表された(https://rockinon.com/news/detail/183029)。サザン40周年イヤーの本番は、春の訪れと共にやってくる。(小池宏和)
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