椎名林檎と宮本浩次の『紅白歌合戦』での狂演は才気と魂のぶつかり合いだった

昨年10月1日に日本テレビ『news zero』エンディングで初オンエアされて以降、年を跨いでもなお新たなリスナーの驚きと感激を生み続けている、椎名林檎宮本浩次“獣ゆく細道”。
ついには『第69回NHK紅白歌合戦』での“獣ゆく細道”共演まで実現した椎名&宮本だが、そんな稀代のコラボレーションのきっかけはまさに、前回(2017年)の『紅白』だった。

「昨年はエレファントカシマシとして出ておりまして。楽屋みたいなところで椎名さんが『2018年はどういう年ですか?』って」と直接コラボをオファーされた場面を振り返る宮本に続けて、「光栄です、今夜叶いそうで。もちろん、今日のこのことまでを見据えて書きましたので」と明かしていた椎名の言葉からは、この奇跡の共演に懸ける静かなる紅蓮の闘志が確かに伝わってきた。

そして――日本中が注視する『紅白』の舞台で、ひときわタフでグラマラスな狂熱のアートとして響き渡った“獣ゆく細道”。

椎名&宮本のみならずバンドメンバー/ダンサーまで着物姿でコーディネートされた佇まい、和傘を活かしたダンスパフォーマンスも含め、楽曲やアレンジと渾然一体となったコンセプチュアルな総合芸術を立ち昇らせてみせる椎名林檎の才気。
ともすれば我が身を焦がすほどに燃え盛る衝動も狂気も強靭なる意志で統率し、誰もが戦慄必至の激唱として年の瀬の日本へと歌い放ってみせた宮本浩次の熾烈なる魂――。

《借りものゝ命がひとつ 厚かましく使ひ込むで返せ/さあ貪れ笑ひ飛ばすのさ誰も通れぬ程狭き道をゆけ》……渾身の歌声を重ね合わせて観る者を震撼させた椎名&宮本。その姿はそのまま、あらゆる表現の可能性が出揃った2010年代の音楽シーンにおいて、揺るぎない「うた」に全存在を懸けて闘う表現者の矜持の証明そのものだった。(高橋智樹)
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