あいみょんの歌はなぜこんなにも伝わるのか~『瞬間的シックスセンス』を聴いて~

あいみょんの歌はなぜこんなにも伝わるのか~『瞬間的シックスセンス』を聴いて~ - 『瞬間的シックスセンス』『瞬間的シックスセンス』
かつて“君はロックを聴かない”が注目を集めた時に僕は以下のようなコラムを書いた。
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歌詞が特に注目されているこの曲だけれど、メロディやサウンドも含めて、ロックの、恋に焦がれたり、恋を乗り越えたり、恋に痛む胸に寄り添うところにフォーカスしているところが僕は画期的だと思う。
恋心に寄り添うならばJ-POPやR&B、もしくはその向こうにある欲望や本能を直撃するならEDMが主流で、ロックのメロディの乾きやビートの熱量にラブソングを彩るものというイメージは薄い。
そんな常識を覆す手触りが“君はロックを聴かない”にはある。
アナログレコードに針を落とす感覚が、一周回って新しいテクノロジーに触れるのと同じくらい新鮮なものになったとも言える今という時代において、ロックのメロディの乾いた質感が撫でる胸の痛みは、ロックのビートが駆り立てる血流の速さは、そして自分を盛らない正直な言葉は、リアルタイムな青春を彩る有効なツールになり得る。
それを証明するような作りでこの曲はできている。
ロックをモチーフに、あいみょん自身がロックから受け取って血肉にしてきた素材だけを使いながらも、ロックという言葉が持つイメージの枠を何気に取り払うような仕上がりで、ただ「今」を震わせる歌として届けられたのが“君はロックを聴かない”。
その自然体が、僕はあいみょんの新しさだと思う。
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本日発売のあいみょんのニューアルバム『瞬間的シックスセンス』を聴くと、あの時に書いたことを、もうロックという言葉もポップという言葉もいらないくらいシンプルな形で感じる。
あいみょんの歌は、圧倒的に「本能的」で「日常的」で「論理的」。
これは音楽に限らないけれど、その3つの掛け算ポイントが高いと心と心が裸で繋がれる、今はそんな時代。
そんな時代ならではの圧倒的に裸で伝わる音楽だけがこの『瞬間的シックスセンス』には詰まっている。(古河晋)
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