スカパラ初のトリビュートアルバム『楽園十三景』、その聴きどころ・味わいどころを徹底解説

スカパラ初のトリビュートアルバム『楽園十三景』、その聴きどころ・味わいどころを徹底解説 - 『東京スカパラダイスオーケストラトリビュート集 楽園十三景』『東京スカパラダイスオーケストラトリビュート集 楽園十三景』
4月からデビュー30周年イヤーに突入する東京スカパラダイスオーケストラをいち早く祝福するような、スカパラ史上初となるトリビュートアルバム『東京スカパラダイスオーケストラトリビュート集 楽園十三景』。
SKY-HI04 Limited Sazabys10-FEET大森靖子ACIDMANLiSAUNISON SQUARE GARDENHEY-SMITH/VIVA LA J-ROCK ANTHEMS feat.TERU(GLAY)/BiSH氣志團キュウソネコカミフジファブリックの計13組が、それこそ「闘うように楽しんでくれ!」という谷中敦(Baritone sax)のライブMCよろしく、スカパラのマスターピースの数々と真正面から対峙し、全力で謳歌してみせた名盤だ。

かつてスカパラ楽曲に参加したゲストボーカルが痛快なまでのリベンジ熱演を聴かせた、10-FEET“DOWN BEAT STOMP”とUNISON SQUARE GARDEN“愛があるかい?”。スカアンセムとヒップホップがスリリングに乱反射し合う、SKY-HI“Paradise Has No Border -SKY-HI Remix-”。氣志團が「自称『房総一イカれたインストゥルメンタルバンド』」の矜持を見せつけた“砂の丘~Shadow on the Hill~”……。
「美メロ」、「スカ」、「ロック」などそれぞれの着眼点とアイデアで、13組のアーティストがスカパラの楽曲を解釈し炸裂させることによって、スカパラの音楽世界の豊かさと強さが改めて「今」に提示される、実にマジカルな作品でもある。

そして――スカパラ初のトリビュート盤である今作に「ジャンルの枠組みを超えたアーティストのリスペクトの結晶」以上の意味合いを与えているのが、最後に収められた“戦場に捧げるメロディー”のフジファブリックによるカバーだ。

1999年11月にスカパラ18thシングル表題曲としてリリースされた“戦場に捧げるメロディー”は、同年5月に急逝したドラマー・青木達之に捧げられた楽曲だった(作詞クレジットには沖祐市(Key)&NARGO(Trumpet)とともに青木の名前も刻まれている)。今作のラインナップ第2弾発表でこの曲名を見て、またその演奏者がフジファブリックであることを知って、特別な想いを抱いた方も少なくないことと思う。

《いつか別れの日が来ても/止まらぬ鼓動に捧げるメロディー/過ぎ去った時を超えて/つながる心に捧げるメロディー》
(“戦場に捧げるメロディー”)

「30年の道のりや、その間にあった出来事は想像することしかできませんが、バンドマンとしての生き様を重ね合わせながら、心を込めて歌わせて頂きました」――今回のトリビュート盤に際し、山内総一郎(フジファブリック/Vo・G)はそんなコメントを寄せている。
キャリアの長さこそ違えど、大切な盟友でもあるメンバーを喪いながら、それでもひたむきに前進し続けるバンド同士ゆえの、真摯で切実なオマージュのかたち。静謐と高揚の間を行き来するアンサンブルも、ひと言ひと言噛みしめるような山内総一郎の歌も、確かな包容力をもって響いてくる。

困難も苦悩も悲哀もこの上なく晴れやかな祝祭感へと昇華しながら30年間闘い続け「その先」の希望を鳴らす東京スカパラダイスオーケストラ。今作に注がれた13組の愛と才気越しに、その真価をリアルに感じられる1枚であることは間違いない。(高橋智樹)
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