改めてNUMBER GIRLの楽曲/サウンドの衝撃を考える――甦ったベスト盤を鬼聴きして

改めてNUMBER GIRLの楽曲/サウンドの衝撃を考える――甦ったベスト盤を鬼聴きして - 『OMOIDE IN MY HEAD 1 〜BEST&B-SIDES〜』『OMOIDE IN MY HEAD 1 〜BEST&B-SIDES〜』
今から5年前の2014年、NUMBER GIRLメジャーデビュー15周年記念のタイミングで東芝EMI時代のアルバム3作品がリマスター再発された際には、その5年後にNUMBER GIRLが再結成を発表したり、解散後に発売されたベスト盤『OMOIDE IN MY HEAD 1 〜BEST&B-SIDES〜』がデジタル・リマスタリングで再発されたりするなど、微塵も予測していなかった。

“透明少女”、“NUM-AMI-DABUTZ”などシングル表題曲はもちろん、“OMOIDE IN MY HEAD”や“SAMURAI”、“TATTOOあり”といったアルバムからの代表曲群を収録した「Disc 1」、インディーズ/メジャー計6作品のシングルのカップリング曲を全網羅した「Disc 2」の2枚組構成のベスト盤『OMOIDE IN MY HEAD 1 〜BEST&B-SIDES〜』が最初に発売されたのは2005年、解散から約2年半後のことだ。

今作の「Disc 1」が2019年の今、「NUMBER GIRL入門編」として改めてリアルタイムでの意義を帯びてくることになる――というのも、当時はまるで想像も及ばなかったのだが、それはひとまず置いておく。が、特にこの「Disc 1」は、NUMBER GIRLの音楽がロック/バンドの表現においていかに異質であるか、そして彼らがいかに急速に音楽的な変化と進化を遂げていったか、という点を明確に浮かび上がらせてくる。

テレキャスターでリズムギターを奏でる向井秀徳(Vo・G)&ジャズマスターでリードパートを担う田渕ひさ子(G)、というギター2本の4ピース編成は、現在でもロックバンドの標準的なアレンジ構成である。
だが、カポタストと開放弦を組み合わせた向井の「オレ押さえ」による不穏なコードワークと、全身震撼必至のフィードバックサウンドまで乗りこなすような躍動感と闘志に満ちた田渕の熱演とが織り成す「6本の狂ったハガネの振動」同士のせめぎ合いは、解散後も数多くのフォロワーたちにインスピレーションを与えながらも、決して上書きされることのない凄味を放ち続けている。
そしてリズム隊。ひずんだ極太サウンドでルートを激奏する中尾憲太郎(B)、オーソドックスなリズムを叩いても爆裂ロック陣太鼓として響くアヒト・イナザワ(Dr)が繰り出すビートは、向井の楽曲に備わっている切迫感を極限増幅するものだ。

NUMBER GIRLの楽曲には、いわゆるドミソのような3コードやパワーコードといった「わかりやすい」コードはほとんど登場しない。またミックス面においても、各楽器の音のカブりを解消し音域を整理整頓し……といった「わかりやすさ」とは対極の、むしろ「鉄弦の鳴りと人間の咆哮が音程を持っていることの奇跡」すら感じさせるほどの生々しい質感と迫力に貫かれている。
そして、向井が唯一無二のコード感と激烈リズム越しに音楽に託し続けてきたその生々しさの根源は取りも直さず、向井自身が抱いてきた街への/社会への違和感と軋轢、己をも焼き尽くしかねないほどの紅蓮の衝動そのものに他ならない。

オルタナ基調のインディーズ時代から、しだいに“SASU-YOU”などで楽曲とサウンドの鋭利さを増していく――というNUMBER GIRLの音楽的な変遷を如実に伝えている「Disc 1」。その終盤、つまり解散前ラストとなったメジャー3rd(通算4枚目)アルバム『NUM-HEAVYMETALLIC』の頃の楽曲へと聴き進めていくと、その音楽性は急激にダブの色合いを強めつつさらに先鋭化していくのがわかる。

前述のリマスター再発のライナーノーツ取材の際、向井は当時の自分を「自我の王国」と振り返っていた。己の音楽を研ぎ澄ませることに専念していた向井の異常なまでの緊迫感は、音楽を劇的に進化させる推進力にもなったと同時に、メジャーデビューからわずか3年半での解散を招いた大きな要因でもある、と。
逆に言えば、バンドシーンに安住することなく、常に焼け切れそうなほどの熱量と気迫で己と対峙していたバンドである、ということだ。それこそが、我々が今でもNUMBER GIRLの音楽を、ノスタルジーとはまったく別の感情をもって聴き続けている理由でもある。

ちなみに、今作の表題に「1」と銘打たれているのは、当時その後に「2 〜記録シリーズ〜(1・2)」(2002年度ライブ音源のベストテイク集)、「3 〜記録映像〜」(すでにライブ音源化されていた1999年渋谷クアトロ公演&2002年札幌ラストライブなどを収録した映像作品)、「4 〜珍NG & RARE TRACKS〜」(レア音源集)とボックスセットのリリース予定が相次いでいたからでもある。
「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2019 in EZO」での復活まであと3ヶ月あまり。灼熱の季節が、すぐそこまで迫っている。(高橋智樹)
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