【最速レビュー】トム・ヨーク『アニマ』――3作目にして示されたソロ・ワークの全景

【最速レビュー】トム・ヨーク『アニマ』――3作目にして示されたソロ・ワークの全景

トム・ヨークにとって通算3作目のソロ・アルバムとなる『アニマ』。前作『トゥモローズ・モダン・ボクシーズ』から約5年ぶり(『サスペリア』を別枠とすれば)のソロ・ワークとなるわけだが、本作の厳密な出発点がいつだったのかを見極めるのは難しい。例えば、トゥモローズ・モダン・ボクシーズ名義でソロ初来日を果たした4年前の「ホステス・クラブ・オールナイター」のステージでも、“トラフィック”や“インポッシブル・ノッツ”などの計4曲、つまり本作収録のナンバーの約半数が既にプレイされていたし、ここでは『トゥモローズ~』以前から断片的に存在していた素材が数多く再利用されているからだ。今回の新作インタビューで、トムは『アニマ』の完成までのプロセスにおいて、ライブというフィルターを通したことが大きかったと語っている。それを読んでDJセットでありながらまるでライブ・キッチンのような忙しなさで素材をまさに「調理」していた、ホステス・クラブ・オールナイター」の異様なテンションのステージに4年越しで納得がいってしまった。

本作にはバウンシーでポリリズミック、有機的な成形を達成している “トラフィック”や、高速回転するドラム・サンプリングが煽り立てる “インポッシブル・ノッツ”など、アフロビートやクラウトロックのビート・メイクを我流でコラージュしながらドライブさせていく、ダイナミックな波形を描き出すナンバーが一方にある。そしてもう一方には、無調のボイスとメロディがフーガ的重なりを繰り広げていく“ラスト・アイ・ハード~”や、独白じみたトムの呟きが圧巻のシンセのレイヤーによって徐々に抽象性を増していく“ドーン・コーラス”、マニピュレートされたボイスが《こういう時に誰が本当の友達か分かるんだ》と不気味に繰り返す“ラナウェイアウェイ”など、精緻な重層を感じさせるエレクトロニカ・チューンが潜んでいる。

波形と重層、それぞれに素材の特性を見極めながらかたちにしていったことが窺えるし、そのふたつの要素が組み合わさることで、奇妙なバランスが取られているアルバムだとも感じる。これまでのトムのソロ・ワークは、デモ的ミニマリズムを前提にしたアイデアの集積場であり、彼の脳内風景はまるでポロックの抽象画のように、細かいピースのランダムな散らばりとして表現されていた。翻って本作はもっと恣意的で、集積されたアイデアを分類、整理し、まるでトム・ヨークのアーティスト性を再構築していくようなアルバムだ。トムにとってソロがレディオヘッドと並ぶプロパーな表現の場となったことを強く感じさせる一作なのだ。

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