『アメトーーク!』で「~クセがすごい女性グループ~ BiSHドハマり芸人」が放送される! その知らせを聞いて、今さら周囲に対して隠しようもなく清掃員(BiSHファンの呼称)である僕は、ずっとソワソワして落ち着かなかった。地上波の人気番組で、このような形でBiSHが取り上げられることが心から嬉しかったのは勿論なのだが、「あたしの方がBiSHのことが好きなんだからねっ!」という、我々、清掃員を代表していろいろ語ってくれるはずの芸人たちへの嫉妬の念を少なからず抱いていたことも、まずは正直に告白しておこう。
そして、ついにやってきた放送日。番組のオープニングで司会の蛍原徹(雨上がり決死隊)、ゲストの土田晃之、大悟(千鳥)、吉岡里帆が見守る中、ノブ(千鳥)、稲田直樹(アインシュタイン)、奥田修二(学天即)、徳井健太(平成ノブシコブシ)、関太(タイムマシーン3号)、酒井健太(アルコ&ピース)、宮下兼史鷹(宮下草薙)が一斉に立ち上がって「僕たちはBiSH芸人です!」と言った瞬間、僕の胸中でますますメラメラと燃え盛りかけていた嫉妬の炎は、一気に和らいだ。なぜなら、思い思いのBiSHグッズのTシャツを身に着けていた面々による挨拶のポーズが、付け焼刃の清掃員ではないことを、ちゃんと示していたからだ。
「BiSHです!」と挨拶をする際、BiSHのメンバーたちは頭頂部付近で掌をモヒカンヘアのように垂直に立てて、身体を斜めに傾けるのだが(右に15°から20°の間の程よい加減で傾けるのが最も望ましいとされている)、これを真似する素人は、大体、下半身でとんでもない過ちを犯す。上半身を傾けると同時に、両脚を少しガニマタ気味に開くのが、大切であることを見落としてはいけないのだから。本人たちも脚を真っ直ぐにしたままお行儀よく挨拶をすることが結構あるが、最もBiSHらしさを感じる正式な立ち姿として、おそらく多くの清掃員の頭の中で思い浮かぶのは僅かなガニマタだ。さらに付け加えるのならば、なんとなくダラリと弛緩気味のガニマタであるのが、最もBiSHを感じるシルエットだと言えよう。なぜなら彼女たちの挨拶のポーズは、BiSHというグループ名に込められている「Brand-new idol SHiT(新生クソアイドル)」が由来であり、先述の掌はマキグソの頂の部分を表している。したがって、身体の他の部分もマキグソ感を帯びているべきなのだ。そのためにも、ガニマタが弛緩気味であることは、非常に重要だと言わざるを得ない。なぜなら、キレよくシャキッとしたシャープなシルエットのマキグソなんて、全くマキグソらしくないではないか。その点をきちんと理解していることが窺えたBiSH芸人たちの姿に仲間の香りを感じ取った清掃員は、たくさんいたに違いない。
しまった! 細かい説明で早速脱線してしまった。本題の『アメトーーク!』の話に戻ろう。千鳥の単独ライブで使用された音楽は、全てノブの意向でBiSHの曲だったことが明かされて、何も聞かされていなかった大悟が仰天したりもした場面を経て、BiSHに関する基本的な事柄がとても丁寧に紹介されていった。「楽器を持たないパンクバンド」というユニークなコンセプト、猛烈に激しいライブパフォーマンス、本物のウンコまみれになって撮影したグループ最初のMV“BiSH-星が瞬く夜に-”、99秒だったメジャーデビュー曲“DEADMAN”、ライブの会場が瞬く間にアリーナクラスとなっていった快進撃、楽曲の圧倒的な素晴らしさ……BiSHのことをまだよく知らない視聴者に興味を持って貰ううえで、最適だと思われるポイントが映像を交えて紹介される度に、心の底から嬉しそうに頷きつつ、彼女たちへの想いを熱く語っていたBiSH芸人たちの姿からは、完全に仕事を忘れて楽しんでいる様子が伝わってきた。
このグループを語る際に避けて通ることはできない「かなりどうかしている」という点も、BiSH芸人たちは、しっかりと語ってくれた。所属事務所WACKの社長である渡辺淳之介によるプロデュースの斬新さ、ユニークなプロモーション手法などが紹介されたなかで、「よくぞ、そこに関しても触れてくれた!」と嬉しくなったのは、彼女たちの本質にある「いかがわしさ」についての部分だ。清掃員ならばよく知っていることだが、BiSHの曲の中には公共の電波に乗せにくいものがいろいろある。例えば“OTNK”というインディーズ時代から歌われている曲は、とんでもない言葉を連呼しているとしか思えない音の響きが、随所に盛り込まれている。また、両A面のどちらのタイトル曲にもタイアップが付いて、「BiSHは丸くなってしまっている」という批判を集めた『Life is beautiful / HiDE the BLUE』と同日にゲリラリリースされて「全然丸くなっていなかった!」ということを証明した『NON TiE-UP』のタイトル曲では、聴き間違いようもなく《おっぱい舐めてろ チンコシコってろ》と高らかに歌われていて、親の前では非常に鑑賞しにくい仕上がりとなっている。この2曲をしっかりと流しただけでなく、彼女たちがライブの本番直前に舞台袖で円陣を組んで必ず発する言葉=「チンポ!」にも触れてくれたのは、『アメトーーク!』制作サイドの誠実さがとても表れていた。いくら遅い時間帯のバラエティ番組とはいえ、こんなにもおっぱい、チンコ、チンポといった言葉が連呼されるのは、異例のことだったのではないだろうか。
アイナ・ジ・エンドが手掛けている斬新な振付、ユニゾンに頼るのではなく、メンバー各々の声と歌唱法の個性を絶妙なバランスで活かすサウンドプロデューサー・松隈ケンタの偉大さ、ライブ現場への潜入取材……様々な角度による紹介を観ながら「BiSH、ほんと大好き! この番組が終わったら、またいつものようにBiSHの曲を聴こう!」となっていたであろう清掃員たちは、メンバーたちが番組の収録スタジオに登場した後に始まったCMにもワクワクしたはずだ。11月6日(水)にリリースされるニューシングル『KiND PEOPLE / リズム』の収録曲の内、“リズム”のApple Music/iTunes Storeでの限定先行配信がスタート、Apple Musicではアーティストプレイリスト・ESSENTIALS「はじめてのBiSH」も配信される――という旨を告げるCMのなかで“リズム”のMVの一部も流れて、最後には「2019年11月9日 四国松山にてフリーライブ決定!!」という文字もドーン!と浮かび上がったのだから。特に四国エリアの清掃員たちが、瀬戸大橋が揺れるくらいに大喜びした様が目に浮かぶ。もともと11月9日に開催が予定されていた全国ツアー「NEW HATEFUL KiND TOUR」の松山公演は、諸事情によって中止となることが7月末に発表されていた。しかし、こういう粋な展開を遂げるとは! ただ大人しく諦めて残念な出来事を受け入れるのではなくて、知恵を絞った末の攻めの姿勢で胸躍るサプライズを仕掛けるのも、BiSHのパンクスピリットを感じるところだ。やっぱりかっこいい!
……というような感慨に耽る時間はあまりなく、CM明けにはスタジオライブがスタート。 “BiSH-星が瞬く夜に-”が披露された。ライブハウスっぽい黒い頑丈な柵で仕切られたフロアから熱いコールを送った我が同志のBiSH芸人たち。そして、番組の序盤では彼らに呆れていた他の出演者たちも一緒になって大盛り上がりしていた姿は、とても素直に心動かされるものがあった。今や、全国各地の大型ロックフェスティバルに出演するようになり、ロックバンドとの対バンの機会も増えているBiSH。しかし、活動の初期段階からそのような状況だったわけではない。「ほんとにそんなにすごいの?」、「どこがパンク?」、「なんでロックフェスに出てるの?」、「ロックバンドとの対バンなんて場違い!」という疑いの眼差し、意地の悪い声を、唯一無二のライブパフォーマンス、強力極まりない楽曲群、ブッ飛びまくった存在感、アクの強いメンバー各々の個性によって華麗に覆して、「ほんとにすごかった!」、「これはパンクだよ!」、「これからもロックフェスに出て!」、「またライブ観たい!」という評価を勝ち得てきたのが、このグループの美しい足跡だ。そして、進化はまだまだ続く予感しかしない。先述の新曲“リズム”は、アイナ・ジ・エンドが作曲、モモコグミカンパニーが作詞という新機軸だし、スタートしたばかりの全国ツアーは、各地の清掃員たちをますます熱狂させながら、彼女たちのパフォーマンスを一層磨き上げるはずだし、そもそも11月6日(水)のニューシングルのリリースが待ち遠しくて仕方ないし、おそらく我々の度胆を抜く何かがたくさん待ち構えているのだと思う。そんなことも改めて思わせてくれた『アメトーーク!』の「~クセがすごい女性グループ~ BiSHドハマり芸人」は、とても良い番組だった。BiSHの魅力が、幅広い層に伝わっていたら嬉しい。(田中大)
なぜBiSHにドハマりしてしまうのか? その理由が『アメトーーク!』で解明された
2019.10.15 17:00