常に自分の内面と市場の両方に向き合い続けながら、弛まずアートとポップの真実を追い求め、そこに確かな答えが出るまでアルバムとしてパッケージしなかったサカナクション。
そこには痛みも苦しみも悲しみもあったと思うが、その時間が作品として形を持った今、振り返るとそれらの感情は違った形で見える。
もうその感情そのものは戻ってはこないけれど、その振り返ることで形が違って見える場所に立って今のサカナクションは新しい感情を表現することができる。
その新鮮なエモーションが、踊れる曲にも、聴かせる曲にも、引きずり込む曲にも、吹っ切れた爆発力を持たせていた。
サカナクションが『834.194』完成までの6年を超えてそんな新しい季節を走り始めたことが嬉しくもあり、同時にそこには不思議な切なさもあった。(古河晋)