[Alexandros]のロックは孤独で冴えない日常にも効く――「裏アレキ」な名曲5

[Alexandros]のロックは孤独で冴えない日常にも効く――「裏アレキ」な名曲5
今や日本のロックシーンを牽引する押しも押されもせぬビッグ・バンドとして名を馳せ、いくつものロックアンセムをもつ[Alexandros]だが、その裏側にはひとりの人間として生きる日常とふとした瞬間に感じる孤独がある。その両面を描き、歌い続けてきたからこそ、彼らは僕たちのすぐそばで夢やロックのロマンを体現する存在となった。ここではそんな「裏[Alexandros]」に注目。人間的でリアルな心情が綴られたこの5つの楽曲を聴けば、[Alexandros]というバンドの奥深さがわかるはずだ。(小川智宏)


①かえりみち

2010年リリースのファーストアルバム『Where's My Potato?』の最後に収められた“かえりみち”。アルバムのそれまでのロックなモードから一転、メランコリックでブルージーなギターの音色にハッとさせられる1曲だ。《小腹が空いた ここはどこ》と、ライブの狂騒から一夜明け、酔いつぶれて見知らぬ駅で目覚めるシーンから始まるこの曲には、ミュージシャンとしてスポットライトを浴びる姿とは裏腹の、等身大の人間がもつ孤独がスケッチされている。《言葉を持ち 汗をかき 胸張り 歌ってた》昨夜と《駅のホーム/寒くて 鼻水が光ってる》今の対比の中に、走り出したばかりの川上洋平(Vo・G)の姿がある。

②風邪をひいた時の歌

風邪をひいたサラリーマンが会社を早引けして実家に帰って安心する、というこの歌。あまりにもリアルなエピソードは川上の実体験だろう。もちろんこの曲の主眼は日常の描写ではなく、それを通して描かれる主人公の心の変化のほう。体調を崩して少し弱った心で上司や親と向き合う中で、少し大人になった自分に気づき《積み立て預金を始めるか》と思い至る……そんな主人公の姿に共感する人は、筆者も含め多いのではないかと思う。どこか懐かしいようなメロディとやさしくも最後に向けて力強くなっていくバンドサウンドに胸がツンとする。

③12/26以降の年末ソング

いよいよ1年の終わりに向かってバタバタと進んでいく「12/26以降」の日々。忙しない街の空気を感じながら《立ち止まって/落ち着いて/この一年を思い返そう》というのがこの“12/26以降の年末ソング”。よかったことも悪かったことも、よくできた自分も情けない自分も、全部を振り返って抱きしめて、新しい年に向かっていく。言葉でいうと簡単だが、この自分と世の中に対する客観的な眼差しは川上一流のものだと思う。たったひとりの自分の話が、歌とバンドの力で《いつまでも人間は/失敗と反省を繰り返すけど/同じくらい挑戦と希望を捨て切れない》という大きくてパワフルなテーマにつながるところもいい。

④真夜中

でっかいステージで「愛してるぜ!」と叫んでいるロックスターが、こんな孤独な夜を過ごしているのかと考えると、それだけで切なくなる。《一人部屋の隅でうずくまって/歌でも歌っていよう》、《誰かに「何か」伝えたいけれど/声が出てこない》――きっと誰にでもあるだろうそんな気持ちも、[Alexandros]は美しいメロディと真摯な言葉で歌い上げる。アルバムを聴いていてすっと心の隙間に入り込んでくるこういう曲もまた、彼らの音楽に触れる醍醐味のひとつだ。《未だに誰かと繋がりたい/故にこうやって歌にしている》という歌詞に見える人間的な本音が愛しい。

⑤Thunder

[Alexandros]名義で初めてリリースしたシングル『Adventure / Droshky!』のカップリング。アルバム未収録ながらファン投票でダントツの1位を獲得したこともある人気曲だ。アーバンポップなサウンドに乗せて《あたりさわりない僕の毎日がまた/月火水木金で染まってく》と退屈な「当たり前の生活」が描かれ、それと対比するように「雷」に象徴される刺激と変化の世界の存在が示唆される。《痛みも知らず/刺激も知らず/死にたくはないのさ》。それはひとりの人間として暮らしながら、ときにロックミュージシャンとして鮮やかなライトに照らされる川上の自画像なのかもしれない。
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