【BiSH大百科】「楽器を持たないパンクバンド」の魅力とは一体何なのか? メンバー6人を徹底解説!

【BiSH大百科】「楽器を持たないパンクバンド」の魅力とは一体何なのか? メンバー6人を徹底解説!
「楽器を持たないパンクバンド」として活躍の場を着々と広げながら、ロックファンをも巻き込んで圧倒的な人気を確立しているBiSH。唯一無二の表現スタイルを切り拓き続けている彼女たちは、メンバー各々の個性も非常に強い。6人の特徴、持ち味、注目すべき部分を文章にまとめてみた。読みながら魅力を再確認しつつ、曲を鑑賞する際の楽しみを深めるヒントも発見してもらえると、とても嬉しい。(田中大)


■アイナ・ジ・エンド

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BiSHの歌声の「顔」とも言うべき存在、アイナ・ジ・エンド。独特なトーンのハスキーボイスは、哀愁、優しさ、切なさ、温かさ、安らぎ、雄々しさ……様々な表情を帯びながら迫ってくる。彼女の歌声が天高く突き抜けるかのように響き渡った瞬間の美しさは、本当にかけがえのないものがある。そんな様をまざまざと体感したいという人には、“オーケストラ”や“My landscape”あたりを手始めにオススメしておこう。特にサビの部分は、耳を傾けているとアイナの声に心奪われずにはいられない。

彼女の歌声はBiSHが始動して以降、すぐに高い評価を集めるようになり、様々なアーティストの作品に参加する機会が、日増しに増えていった。ドラマ『きみが心に棲みついた』の主題歌となったMONDO GROSSO“偽りのシンパシー”、アニメ『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 前夜 赤い彗星』のエンディングテーマとなった「SUGIZO feat. アイナ・ジ・エンド(BiSH)」名義の“光の涯”などで彼女の声を耳にして、「歌ってるのは誰⁉」となり、BiSHを聴くようになったというような人も、決して少なくないはずだ。


そして、 アイナの一面としてもうひとつ絶対に触れておかなければならないのが、ダンス。そもそも、彼女のパフォーマンスの原点はダンスであり、地元の大阪にいた頃は、ひたすら踊ることに情熱を傾けていた。しかし、歌を評価される機会があり、シンガーを目指して上京。地道に活動しながらもなかなか芽が出ず、苦しい日々が続いたらしい。家賃が払えなくなってしまい、屋外で寝泊まりをした時期もあるというのは、清掃員(BiSHファンの呼称)の間では、とても有名な話だ。

彼女はBiSH始動時から振付を一手に引き受けている。真似したくなる印象的な動き、ウイットに富んだ発想がたくさん盛り込まれているBiSHのダンスが観客に与えるインパクトは、非常に大きい。彼女が初めてBiSH以外のグループの振付を手掛ける機会となったEMPiREの曲“アカルイミライ”も素晴らしい仕上がりだ。類人猿が人類へと進化していく過程をイメージさせる要素が盛り込まれていて、非常に面白いので、参考までにオススメしておく。そういえば……この曲がライブで披露されているのを真剣に見つめながら、とても愛おしそうにしていたアイナを見かけたことがある。BiSHのメンバー各々の動きの個性を効果的に活かしている彼女の振付の根源にあるのは、あのような姿から隠しようもなく滲み出ていた温かな愛情なのだと思う。

■モモコグミカンパニー

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メンバー全員が作詞をするBiSHの中で、その点に関する中心的な存在となっているのがモモコグミカンパニーだ。作詞を含めた「文章を書く」ということに対する彼女の意欲は、非常に高い。2018年3月に出版された書籍『目を合わせるということ』には、モモコの半生、BiSHのメンバーとしての軌跡、抱いてきた様々な想いが、鋭い描写で綴られている。そして、彼女が作詞を手掛けてきた曲も、印象的なものが数多い。

不安と自信のなさを抱えながら繰り返す自問自答を描いた“JAM”。先輩グループである第1期BiSの名曲“FiNAL DANCE”と併せて聴くと、BiSHのメンバーとしての彼女の想いが一層の輝度を帯びながら浮かび上がる“Nothing.”、アイナが喉の手術を控えた時期に手掛けた曲で、その心情に豊かな言葉を与えた“リズム”などは、非常に美しい歌詞の曲たちだ。しかし、その一方で……揺れる乙女心をくだけまくった表現で描いている“DA DANCE!!”、声に出して発する音の響きの心地よさをひたすら活かし、なかなかふざけまくった作風を発揮している“ぴらぴろ”といった親しみやすい手法にも長けているのが、作詞家としての彼女の引き出しの多さを示している。モモコが知的な人物であるのは確かなのだが、「アイドルになりたい女の子って、どんななのだろう?」という興味本位でBiSHのオーディションを受けたという逸話の持ち主であり、イカを食べることをこよなく愛し、奇行とドジっ子エピソードにも事欠かないからこそ、多彩な歌詞を書くことができているのかもしれない。


モモコは、ダンスパフォーマンスの面でも、かけがえのないものを持っている。愛くるしい彼女の動きは、人の心を和ませる天賦の何かを放っているのだ。その点に関しては、ハシヤスメ・アツコとペアを組む振付がある曲で、効果的に煌めくことが多い。ギャル同士が仲良くしているのかと思ったら、いきなりドSと化したハシヤスメがモモコに往復ビンタをし始める“SMACK baby SMACK”。人質となって哀れな表情を浮かべるモモコのこめかみに、ハシヤスメがピストルのように指を容赦なくつきつける“Help!!”――この2曲が観客に与えるインパクトはとても大きい。彼女たちの組み合わせは、『ポプテピピック』のポプ子とピピ美に喩えられることがよくあるが、漫画のキャラクター的なキャッチーな存在感があるのも、モモコの素敵な魅力だ。

■セントチヒロ・チッチ

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アイナとは別の形で、BiSHの歌を力強く支えているセントチヒロ・チッチ。ハスキーボイスのアイナに対して、彼女の歌は柔らかで瑞々しく、安定感が非常に高い。この声が響き渡ることによって、個性豊かなメンバーたちの歌が、絶妙なバランスでひとつになることができている。そして、彼女の歌声が帯びている二面性もとても魅力的なのだ。“オーケストラ”の歌い出しに代表されるような潤いに満ちた温かな声は、リスナーの心を切なく震わせるが、ふとした瞬間に突然、少年的な凛々しさを帯びることがある。“BiSH-星が瞬く夜に-”のサビをライブで歌う時の彼女は、その代表例だ。盛り上がる清掃員を嬉しそうに見つめながら、自信たっぷりに熱い歌声を響かせる様は、とても堂々としていてかっこいい。このような時のチッチは、ロックバンドのボーカリスト的でもある。あの歌の佇まいは、ロックに造詣が深いことも関係しているのかもしれない。彼女は「THAT is YOUTH!!!!FES」というイベントを、これまでに2回企画。2019年にはGEZAN、リーガルリリーeastern youth、2020年には突然少年をゲストに招き、大盛況となった。日頃からロックを熱心に聴いていて、ライブにも足を運んでいる彼女は、今後もBiSHがさらに広い世界に飛び出していくための機会を生み出していくだろう。


彼女の魅力を感じられる曲に関しては、“プロミスザスター”を強力にオススメしておきたい。他の5人がチッチの腕を掴み、全員で星を描くかのように一斉に動く振付が盛り込まれているが、あの場面は非常に綺麗だ。彼女の掌と指の優美な動き、気高さを感じるシルエットが存在することによって、この曲がもともと帯びている鮮烈さは、効果的にブーストされている。ライブで聴く機会がある人は、そんな点にも注目しながら鑑賞したら、チッチのファンにならずにはいられないはずだ。

そして、彼女に対してさらに付け加えるならば、「BiSHの中で一番のしっかり者」という点も挙げられる。ライブのMCで収拾がつかなくなることが頻繁にあることからも窺われる通り、お世辞にもトークが得意とは言えないこのグループだが、チッチのおかげでグダグダな内容が上手くまとまることがよくある。メンバーを代表して想いを言葉にする役割を担うことも、彼女が一番多い。BiSHにインタビューをしたことがある記者は、おそらくほぼ全員が、頼りになるチッチの存在に助けられたことがあるはずだ。

■ハシヤスメ・アツコ

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リンリンと一緒に新メンバーとして2015年8月に加入したハシヤスメ・アツコ。メンバーの中で眼鏡を着用しているのは彼女だけであり、実は密かに正統派の美人であり、BiSHがバラエティ番組などに出演した際には司会者に話しかけられることも多い。「人前で眼鏡が外れることが万が一あったらクビ」という非情な宿命を背負っているので、彼女の眼鏡に手を伸ばそうとする芸人の姿を観ると、清掃員はヒヤヒヤせずにはいられない。

ハシヤスメは、BiSHのライブで恒例となっているコントコーナーの中心人物でもある。シュールで突拍子もないことを言い始める彼女を冷めた眼差しで見つめる他の5人――というようなオチを迎えたりするコントは、エモーショナルでドラマチックなパフォーマンスが全開で繰り広げられるBiSHのステージに、効果的なアクセントを加えている。ハシヤスメのコメディエンヌとしての唯一無二の佇まいは、ピンク色の衣装を眩しく揺らし、BiSHのメンバーたちも巻き込みながらマッチョマンたちとノリノリで踊るソロ曲“ア・ラ・モード”のMVでも大いに光っているので、強力にオススメしておきたい。

飛び道具のような存在としての紹介から始めてしまった気がするが……ハシヤスメのパフォーマンス力は高い。息が続く限界ギリギリのコーラスパートを歌いながら、全力で飛び跳ねる彼女を観ていると胸が熱くならずにはいられない“ALL YOU NEED IS LOVE”は、BiSHのライブで欠かせない代表曲のひとつだ。壮大に歌声を響かせるハシヤスメが印象的な“NON TiE-UP”も実に良い。YouTubeに公式MVがアップロードされているので、気になる人はそれもチェックした方がいい。彼女がスラリと長い両腕でWの文字を描きながら歌う3分00秒前後は、何度も繰り返し観たくなる。


面白いのにかっこよくて美しいという独特な佇まいの持ち主である彼女の雰囲気が最も端的に表れている曲は、アニメ『ヘボット!』のエンディングテーマとなった“社会のルール”ではないだろうか。ハシヤスメが作詞をしたこの曲は、どこかとぼけたトーンを帯びているが、ホロ苦くて切ない風味も絶妙に醸し出されている。飄々としていて、とても面白いお姉さんだが、逞しく生きながら自身の道を切り拓いているハシヤスメの姿と、この曲が放つ印象は自ずと重なる。

■リンリン

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非常に無口なリンリン。しかし、多くを語らずとも何かを豊かに伝えてしまう不思議な力の持ち主だ。彼女の高い表現力に関しては、手掛けている歌詞にも表れている。決して消えることのない疎外感、深まり続ける孤独、不甲斐ない自分への苛立ち、冷めていくばかりの心……抱えている想いをダイレクトに突きつけるかのような“My distinction”、“O・S”、“ファーストキッチンライフ”、“Am I FRENZY??”、“VOMiT SONG”など、リンリンの歌詞は、リスナーの心に強く訴えかけるものがある。彼女の代表作“beautifulさ”には、諦めの心境が綴られているのだが、いつしか清掃員の心を熱く鼓舞する曲となっていった。ライブで披露されると、飛び跳ねながら両手の人差し指を突き上げる、通称「とげとげダンス」を清掃員も一斉に踊る。あの光景は、いつもとても感動的だ。

パフォーマンス面に関しては、強烈なスクリームで存在感を発揮することがもともと多かった彼女だが、ダンスで表現力を煌めかせる場面も、どんどん増えている。その大きなきかっけとなったのは、2018年6月にシングルとしてリリースされた“Life is beautiful”なのかもしれない。アユニ・Dとペアを組み、夫婦の幸せな日々と悲しい別れをイメージさせるストーリーを描き上げるパフォーマンスは、この曲に深い色合いを添えている。そして、彼女がさらに脱皮したのが、アルバム『CARROTS and STiCKS』に先行する形で2019年4月に配信された“FREEZE DRY THE PASTS”だ。椅子に座ったリンリンを中心として繰り広げられるパフォーマンスは、不穏であると同時に甘美な恍惚を誘う。リンリンの進化が、BiSH全体の表現も進化させた重要なターニングポイントとして、“FREEZE DRY THE PASTS”は、位置付けることができると思う。


このようにミステリアスな魅力を持っているリンリンだが、かなりお茶目である点にも、最後に触れておきたい。2017年3月にシングル『プロミスザスター』がリリースされた際の取材での出来事なのだが――インタビューが終わってから、リンリンはアユニ・Dにじゃれつき始めた。しかし、ふとした瞬間、アユニの衣装のみぞおち部分にある輪っかに片手がハマってしまい、抜けなくなってしまったのだ。あの時、眉をハの字にして困ったような表情を浮かべた彼女は、とても可愛らしかった。時々思い出しつつ、ほっこりしてしまう思い出だ。

■アユニ・D

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2016年8月24日にZepp Tokyoで行われた「TOKYO BiSH SHiNE repetition」で初舞台を踏んだアユニ・D。「アユニ・DのDは、ダイナマイトのDです!」、「そうなの!?」、「違います!」というやり取りを先輩たちと繰り広げて、「僕の妹がこんなに可愛いわけがない担当、アユニ・Dです!」と、もともとはチッチのものだった自己紹介のフレーズをいきなり奪ってしまったので「活発なタイプなのかな?」と思っていたのだが……後日、取材で初対面してみると、隣にいたリンリンに隠れるようにして、半ば怯えるようにこちらを窺い始めたので、非常に驚かされた。あんなに絵に描いたような「恥ずかしがり屋さん」に、私は未だかつて会ったことはない。

そんな彼女であったが、「新人である」ということに甘えず、先輩メンバーたちに追いつくための努力を惜しまない努力家であることが、すぐにわかった。加入から2ヶ月ほどしか経っていない2016年10月5日にリリースされたメジャー1stアルバム『KiLLER BiSH』の収録曲のひとつ“本当本気”は、アユニが初めて作詞をした曲だが、完成度が非常に高い。《みんなが僕をバカにすんだ ナメんな》という強烈なフレーズから始まり、打ちひしがれながら生きている人間の胸の奥で燃え盛る炎を描写するあの歌詞は、彼女がただの美少女ではないことを、強烈にリスナーに印象付けた。

アルバムリリース直後の同年10月8日、日比谷野外大音楽堂公演で“本当本気”が披露された際、密かに用意した白色のサイリウムを清掃員が一斉に掲げたのは、アユニにまつわる忘れられない風景だ。彼女のひたむきさを心から讃える清掃員の気持ちが、あの空間には溢れ返っていた。このライブではアンコール含め21曲が披露されたのだが、これだけの曲数のパフォーマンスを完璧な状態まで仕上げるためにも、涙ぐましい日々を重ねていたに違いない。


このようなアユニだから、見る見るうちに実力をつけて、頭角を現すようになった。初期のBiSHはアイナとチッチが歌の2トップとして全体をリードする体制だったが、現在はアユニも含めた3人の歌声の連携が、絶大な威力を発揮する場面が多い。例えば、“I am me.”の《綺麗事ばっか言ったってしょうもない かっこ悪い》を「♪しょうもなうぃ~ かっこ悪うぃ~」と歌っているのは、アユニの歌唱法の独特さが非常にわかりやすく表れている部分だ。アクが強くて、ヒネたキャラクターが滲んでいるのに、非常にキュートであるというこの歌声は、今後もBiSHに欠かせない要素として輝き続けるだろう。また、彼女のソロバンドプロジェクト「PEDRO」でベースボーカルとして重ねている経験も、様々な形で活かされていくはずだ。
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