ボブ・ディラン、今なお世界を震わせる詩情の揺るぎない源流が見える、70年代の秘蔵インタビュー

ボブ・ディラン、今なお世界を震わせる詩情の揺るぎない源流が見える、70年代の秘蔵インタビュー - 『rockin'on』2020年6月号より『rockin'on』2020年6月号より

俺がプレイしてる音楽ってのは、基本的には俺の書いてる歌詞のサポート役ってだけだからさ


ノーベル賞受賞後初となる4月の単独来日公演が中止になったものの、鬼気迫るボブ史上最長の楽曲“最も卑劣な殺人”をリリースしたボブ・ディラン。今回ここで紹介するのは、78年のボブのインタビューだ。ボブは名作『欲望』の楽曲たちを引っ提げた75年からのツアー『ザ・ローリング・サンダー・レヴュー』を終えた後、このツアーの映像を劇映画としてまとめた『レナルド&クララ』を発表するが軒並み酷評に見舞われる。さらに『血の轍』や『欲望』のひとつのモチーフともなっていた妻サラとの関係もついに破綻した。

新規まき直しを図ったボブは前のツアーのミュージシャンらに声をかけながら、ホーンとコーラスの厚みもしっかり備えた大所帯バンドを招集して、日本(初来日)とオーストラリアのツアーに乗り出し、究極のベスト・ヒット・ライブを打ち出していった。ベスト・ヒットとなったのはそれ以外のものは聴きたくないと日本の興行主から強く要望されたからだという。ツアーは大成功に終わり(『武道館』にその模様を収録)、ボブはその勢いで新作『ストリート・リーガル』を発表し、ヨーロッパとアメリカのツアーにも乗り出していく。しかし、旅芸人一座の一触即発的な魅力を再現しようとした『ザ・ローリング・サンダー・レヴュー』を目撃していたアメリカの評論家筋からはこの78年のツアーはラスベガスのエンタメさながらと酷評され、さらにホーンやコーラスも備えた構成がまるでディスコ・バンドだとまで揶揄されることになった。

76年までは非常にストイックだったボブに対するジャーナリスト側の戸惑いと、それをものともしないボブの対話が繰り広げられる内容がとても刺激的だ。そもそもなぜ大所帯バンドに向かったのかはわからないが、歴史が明らかにしているのは、次回作『スロー・トレイン・カミング』でもってボブはこのバンド体制をヒントに独自のゴスペル・ファンクを生み出すことになったということだ。 (高見展)



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ボブ・ディラン、今なお世界を震わせる詩情の揺るぎない源流が見える、70年代の秘蔵インタビュー - 『rockin'on』2020年6月号『rockin'on』2020年6月号
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