年末年始特別企画! ロッキング・オンが選ぶ、2020の「年間ベスト・アルバム」TOP10を発表!(第6位)

年末年始特別企画! ロッキング・オンが選ぶ、2020の「年間ベスト・アルバム」TOP10を発表!(第6位)

2020年も残りあとわずか。

新年へのカウントダウンが盛り上がるこのタイミングで、ロッキング・オンが選んだ2020年の「年間ベスト・アルバム」ランキングの10位〜1位までを、毎日1作品ずつ発表していきます。

年間6位に輝いた作品はこちら!
ご興味のある方は、ぜひ本誌もどうぞ。


【No.6】
『ラフ&ロウディ・ウェイズ』/ボブ・ディラン


年末年始特別企画! ロッキング・オンが選ぶ、2020の「年間ベスト・アルバム」TOP10を発表!(第6位)

コロナ・ブルーにこんがらがった人々へ

ディランにとって、実に8年ぶりのオリジナル・アルバムとなった本作。その1stシングル“最も卑劣な殺人”が配信されたのは、3月の終わりだった――ちょうどコロナの第一波で各国の大都市が次々にロックダウンされ、先の見えない不安が地球上を深く覆い始めていたころだ。

そんな中、突然届けられた“最も〜”と、直後に続いた本作のリリースは、まるで「天からの啓示」のようなインパクトを世界中のファンにもたらした。その反応がいかに熱狂的だったかは“最も〜”がビルボード誌のシングル・チャートでディラン史上初の1位を獲得したという事実からもわかってもらえるはずだ。それにしても、なんて完璧なタイミングだったんだろう! ひょっとしてディランは世界がこうなることを事前に知っていたのか!?――いやいや、そんなはずはない。でも、だとしたら、すべては神様(いや、この場合は悪魔?)の偶然のいたずらだったのか? これまでも数々の伝説を打ち立てたディランだけど、2020年に、これほどまで「黙示録」級の伝説をぶちかましてくれるなんて、いったい誰が予想した?

もちろん、発表時の話題性だけでなく、実際のアルバムもまた、とんでもない作品だった。いつものツアー・バンドを中心にレコーディングされ、無駄な要素をいっさい削ぎ落としたミニマムな音楽環境の中で、僕らは、ノーベル文学賞作家が腕によりをかけた、世界一解くのが楽しいクロスワード・パズルのような歌詞世界を思う存分に堪能できる。97年の『タイム・アウト・オブ・マインド』以降の作品と同様、「死」と向き合った歌も多いが、絶望的なトーンではない。むしろ、その逆だ。

シングルで聴いたときには16分55秒というサイズ感ばかり注目されがちだった“最も〜”も、アルバムの最終曲という位置で改めて聴くと、歌詞の多層的な広がりがより鮮明に浮かび上がってくる。それは、JFK暗殺の歌であると同時に、移り行く時代の中で、人々の心を温かく灯し続けた数々のポップ・ソングへの真摯なオマージュであり、また、20世紀アメリカへの壮大な鎮魂歌でもある。79歳を迎えた今なお、常に新しい驚きと共に、ソングライターとして「進化」を続けるボブ・ディラン。改めて言うまでもないことだけど、それは本当に、本当にとてつもなくすごい偉業である。(内瀬戸久司)



「年間ベスト・アルバム50」特集の記事は現在発売中の『ロッキング・オン』1月号に掲載中です。
ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。


年末年始特別企画! ロッキング・オンが選ぶ、2020の「年間ベスト・アルバム」TOP10を発表!(第6位) - 『rockin'on』2021年1月号『rockin'on』2021年1月号
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