年末年始特別企画! ロッキング・オンが選ぶ、2020の「年間ベスト・アルバム」TOP10を発表!(第3位)

年末年始特別企画! ロッキング・オンが選ぶ、2020の「年間ベスト・アルバム」TOP10を発表!(第3位)

あけましておめでとうございます!

昨年末から毎日ご紹介している、ロッキング・オンが選んだ2020年の「年間ベスト・アルバム」。年を越してのベスト10発表が続きます。

年間3位に輝いた作品はこちら!
ご興味のある方は、ぜひ本誌もどうぞ。

【No.3】
『フェイク・イット・フラワーズ』/ビーバドゥービー


年末年始特別企画! ロッキング・オンが選ぶ、2020の「年間ベスト・アルバム」TOP10を発表!(第3位)

メロディと歌詞の記名性こそが未来への鍵

20歳になったビーバドゥービーが満を持してリリースしたデビュー・アルバム『フェイク・イット・フラワーズ』。2019年後半の短期間のうちに書かれた楽曲群を収めながらも、彼女のハイレベルなソングライティングを完璧に裏付ける作品になった。ポスト・グランジ/オルタナ志向のローファイ・サウンドは決して真新しい響きをもたらすものではないけれど、愛くるしさと表裏一体の切々とした女子メンタリティを伝える歌の数々は、ときにノイジーで刺激的、ときに夢見心地なサウンドスケープを纏い、リスナーの心を揺らした。

2019年、BBCの「Sound of 2020」やブリット・アウォーズの「ライジング・スター賞」へのノミネートが契機となってEP群が一層注目されたことや、コロナ禍直前に行われたThe 1975(レーベル・メイトでもある)のUKツアーに帯同したことで、ビーバドゥービーは着々と認知度を高めた。しかし最も大きなきっかけとなったのは、2017年のデビュー曲“Coffee”がTikTokを通じてバイラルヒット(厳密に言えば、カナダのラッパーであるパウフーが同曲をサンプリングした“Death Bed”がヒット)したことだ。動画内で編集された楽曲は、歌詞とメロディが渾然一体となったフックを強く印象付けることが多い。つまり、特定のサウンド傾向によるトレンドが発生しにくい今日のシーンにおいて、一見新鮮さに乏しく思えるビーバドゥービーの表現スタイルは、実は極めてヒットに繋がりやすい構造を持っているのである。技術と個性を楽曲に落とし込むことのできるソングライター/メロディ・メイカーたちの活躍は、今後も増えるはずだ。

ビーバドゥービーことベアトリス・クリスティ・ラウスの作曲センスが本作の核にあるのは間違いないが、EP群を経て次第にロックのダイナミズムを獲得してきたプロダクションも抜け目ない。とりわけアルバムの導入部を飾る“ケア”のグランジ・テイストなギターリフや、“ワース・イット”における美しい轟音のレイヤーは、彼女の歌心をしっかり支えている。重厚なストリングス・サウンドを纏った“ソーリー”も素晴らしい一方、結婚して授かる子供の名前を思い描いた“ヨシミ、フォレスト、マグダレン”のオルタナ女子全開ぶりは微笑ましい。躍進する若きビーバドゥービーが、いずれオルタナ新時代の母となることもあり得るはずだ。(小池宏和)



「年間ベスト・アルバム50」特集の記事は現在発売中の『ロッキング・オン』1月号に掲載中です。
ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。


年末年始特別企画! ロッキング・オンが選ぶ、2020の「年間ベスト・アルバム」TOP10を発表!(第3位) - 『rockin'on』2021年1月号『rockin'on』2021年1月号
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