「人々が本当に聴くべき曲を入れたいと思ったの。ただナイーブなだけじゃなくてね。1stではそのナイーブさが良かったと思うけど、今回は力強いメッセージが欲しいと思った」
ペール・ウェーヴスの3年ぶり待望の新作『フー・アム・アイ?』は、正真正銘のギター・ロック・アルバムだ。ザ・キュアーとマドンナを魔合体させたかのような80sエレクトロ・ポップをやっていた前作『マイ・マインド・メイクス・ノイジー』から一転、シンセ・パートは極力削ぎ落とされている。そうして剥き出しになったギターのざらりとした質感、つんのめり気味に疾走するリフやビートは、ヘザー・バロン・グレイシー(Vo/G)が硬い内省の殻を突き破り、明日や愛について歌い始めた本作に相応しいものだと言える。
今作の収録曲の大半はヘザーが1人で書いたナンバーだ。作曲パートナーにして親友のキアラ(Dr)と友好的に距離を置き、クリエイティブ面で自立した彼女は、パーソナルな面でも本当に強くなった。「Who Am I?」と自身に問いかける葛藤は今も続いているが、それでも《明日はくる》のだと、《私はあなたと共にいる》のだと歌う。コロナ禍の混乱の中で完成に漕ぎ着けた本作に満ちたポジティブなヴァイブ、「孤立」から「連帯」へのモード・チェンジは、2021年の私たちに必要なものだとつくづく感じるのだ。(粉川しの)
ペール・ウェーヴスのインタビューは、現在発売中の『ロッキング・オン』3月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。