【43日間、連続公開!】ロッキング・オンが選ぶ究極のロック・ドラマー43選/デイヴ・グロール

ロッキング・オン6月号では、「究極のギタリスト」を特集しています。そこでギタリスト特集とあわせて 、昨年の9月号に掲載したロッキング・オンが選ぶ「究極のロック・ドラマー」を43日にわたり、毎日1人ずつご紹介します。

「究極のロック・ドラマー」に選ばれたアーティストはこちら。

デイヴ・グロール(ニルヴァーナ)

【43日間、連続公開!】ロッキング・オンが選ぶ究極のロック・ドラマー43選/デイヴ・グロール

ニルヴァーナの解散から四半世紀以上の年月が過ぎ、世界を代表するロック・バンド=フー・ファイターズのフロントマンとして揺るぎない支持を獲得しているにもかかわらず、同時にデイヴ・グロールに「ロック・ドラムの化身」とでも言うべきイメージを抱き続けている人は多いと思う。

それこそナイン・インチ・ネイルズクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジガービッジなど錚々たるバンドからそのビートを切望され、ジョシュ・オム&ジョン・ポール・ジョーンズといったビッグ・ネームとともにスーパー・バンド=ゼム・クルックド・ヴァルチャーズを結成してタフなドラム・プレイを披露する……といったアクションの数々を挙げるまでもなく、彼のドラムがまさにロックの熱量とドライブ感そのものとして愛され続けていることは紛れもない事実だ。

ニルヴァーナ結成から3年の間に実に5人のドラマーがバンドを去った末に、ハードコア・バンド=スクリーム解散直後で行き場を失っていたデイヴ・グロールを迎えたことで、ニルヴァーナのサウンドとアンサンブルが劇的な進化を遂げたことは、今さら言うまでもないだろう。

スティックを逆さに持ち、グリップの部分を大きく振りかぶった渾身のストロークから生まれる、ひとつひとつが衝撃波の如き訴求力を持ったパワフルなアタック感の音色。スネアとスローンの位置に対してハイハットを高く上げた独特のセッティングも、髪を激しく振り乱し汗とスティックの破片を撒き散らしながら繰り出すダイナミックなフォームも含め、そのすべてが彼の激烈なドラミングにとって、そしてニルヴァーナというスリリングな物語にとって不可欠なものだった。何より、ドラムという表現が、リズムやグルーヴといったディテールを超えた巨大なドラマを内包し得るものであることを、彼は同時代の誰よりも鮮烈に体現していたと言える。

とはいえ、彼のドラム・プレイが単に力任せのパワー・ヒットなものではないことは、『ネヴァーマインド』の代表曲“スメルズ・ライク・ティーン・スピリット”1曲だけを例にとっても明らかだ。技術面でのバックグラウンドを基に、狂騒と空白を巧みに配置し、聴く者の感情の真芯だけを正確に射抜くかのようにデザインされた、シンプル&ソリッドでまるで無駄のないフレージング。ミディム・テンポの楽曲にも戦慄必至のカタルシスを巻き起こす、唯一無二のタイトなタイム感――。

同じカートの歌と楽曲であっても、もしデイヴ・グロールをドラマーとして擁していなかったとしたら、“ブリード”も“テリトリアル・ピッシングス”も“レイプ・ミー”も“オール・アポロジーズ”も、果たしてここまでの90 年代グランジ金字塔的な名曲群に成り得ていただろうか?と、『ネヴァーマインド』と『イン・ユーテロ』を聴き返すたびに改めて思いを馳せずにはいられない。

ただし。カート・コバーンの死によってニルヴァーナが活動を終え、デイヴ・グロールがギター&ボーカルとして前面に立つようになった後も、僕らは彼に「ドラマー」としての強靭な推進力を感じ続けていた。彼が自らのサウンドを支えるメンバーとして認めたテイラー・ホーキンスのドラミングが、フー・ファイターズの音楽世界に不屈の生命力を吹き込んでいるから――というのももちろんあるが、それ以上に強く感じるのは、フー・ファイターズの楽曲に常に熱く沸き立つ、デイヴ・グロールの「ビート」そのものだ。

「元ドラマーだからこそ生み出せるビート」ではなく、ロックを愛しロックに愛された者ゆえのエモーショナルな加速感。自分自身を信じながらも現状に慢心せず、前へ先へと己を刷新し続ける、無垢なまでに迷いのない探求精神。身を焦がすほどのロックの熱狂とカオスの先にリスナー/オーディエンスの希望を見出そうと夢想する、晴れやかで真摯な稀代のロック・エクスプローラーとしての在り方――。フー・ファイターズの音楽越しに、僕らが見続けているのは他でもない、「ロック・ドラムの化身」を超えた「ロックの化身」としてのデイヴ・グロールの姿だ。

優れたドラマーとして賞賛される「プレイヤー」は少なくないが、その存在そのものがロックを/シーンを牽引するだけのバイタリティと魅力に満ちている人はそういない。そして、ハード・ロック/メタル/パンクなどエクストリームな音楽のエッセンスを濃密に受け継ぎながらも、それを雄大なロックの包容力として描き、僕らに「その先」のビジョンを想起させてくれる人はデイヴ・グロールくらいだろう。今この困難な時代の状況だからこそ、彼のドラムと音楽はひときわ切実に胸を震わせてやまないのである。(高橋智樹)



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