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ジョシュ・フリーズ(ナイン・インチ・ネイルズ/ア・パーフェクト・サークル)
一昨年10月には、スティングの来日公演に同行。ポリスの曲で、個性の塊のようなスチュアート・コープランドのドラミングを、オリジナルのノリを保ちながら更新するにあたって起用されたドラマーがジョシュだというのはとても納得がいく。
この時の取材では、ドラムを始めた当初こそジャズから学んだものの、10代半ばでパンクに目覚め、ギターを弾いたり作曲するようになった経験が、ミュージシャンとしての自らを特徴づける重要な転機になったと話していた。つまり彼は「洗練されたプレイ」と「洗練されていないプレイ」の両方をコンビネーションさせることができる稀有な資質の持ち主であり、音楽性やアティテュードはパンクでも、ドラムは超絶テクニカルという、90年代以降の新しい流れに先駆けた存在だと言える。
間近に接してみてわかるのは、ソロ作品で見せるブッ飛んだセンスと、繊細な空気を察する謙虚さ、会う人を気持ちよく笑顔にさせる大らかな性格を備えていること。「困った時のジョシュ・フリーズ」なんて言葉もあるんじゃないかというくらい、あるバンドからドラマーが抜けてしまった際のピンチヒッターとして声がかかるケースも非常に多く、その対応力の高さは人柄による部分も大きいのではないだろうか。
ガンズ・アンド・ローゼズやディーヴォから、吉井和哉まで、数え切れないほどのプロジェクトに参加してきているが、代表作を選ぶならば、まずはナイン・インチ・ネイルズのライブ映像作品『ビサイド・ユー・イン・タイム』だろうか。クリック・ガイドを聴きながら同期演奏の比重が高めな条件下で、タイミングをパーフェクトに合わせながら、圧倒的なダイナミズムを上乗せしてしまう実力は、ライブ・バンドとしてのNINをいっそう強力なものにした。
また、スティングやNINは雇われ仕事なのに対し、初期からのキャリアであるヴァンダルズに加え、ア・パーフェクト・サークルに関しては所属意識を強く持っている様子で、バンドの一員としてより自由に叩けたのか、思い入れも深いらしく、在籍時に参加した作品を自身のベストワークのひとつにあげている。実際、生で観ていて震えるほどの感動を最も覚えたのが、APC来日公演でのパフォーマンスだったのは、無関係ではないだろう。あの時は、マジで体が宙に浮くかと思ったね。(鈴木喜之)
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