【43日間、連続公開!】ロッキング・オンが選ぶ究極のロック・ドラマー43選/ビル・ブルーフォード

ロッキング・オン6月号では、「究極のギタリスト」を特集しています。そこでギタリスト特集とあわせて 、昨年の9月号に掲載したロッキング・オンが選ぶ「究極のロック・ドラマー」を43日にわたり、毎日1人ずつご紹介します。

「究極のロック・ドラマー」に選ばれたアーティストはこちら。

ビル・ブルーフォード(イエス/キング・クリムゾン)

【43日間、連続公開!】ロッキング・オンが選ぶ究極のロック・ドラマー43選/ビル・ブルーフォード

メンバーだったイエスキング・クリムゾン、U.K.を始め、関わったジェネシス、ゴング、ナショナル・ヘルスと書くだけでブリティッシュ・プログレ・ヒストリーになる驚異のドラマーがビル・ブルーフォード。その正確無比なドラミング・テクニックは言うまでもなく、ベースとなっているジャズ、ワールド・ミュージック的な要素まで幅広いサウンドに対応できるところが、多くの名手たちの人気を集める所以だ。

彼の特徴は、いわゆるブルース、ブラック・ミュージック・ベースのドラマーと違い、最初にあこがれたドラマーが、ジャズのレジェンド、マックス・ローチだった点で、ローチについて書き出すとキリがないが、ポイントはモダン・ジャズの起源とも言うべき40年代のビバップ最初期から活躍し、デューク・エリントンやチャールス・ミンガス、マイルス・デイヴィスといった巨人たちと渡り合い、70年代にはアーチー・シェップ等フリー・ジャズ・プレイヤーたちと活動したりと柔軟な姿勢が際立っているところ。そのプレイは会話するようなドラミングと言われるのだが、まさにブルーフォードにはそんな要素が受け継がれている。

彼の名前を最初に広げたのはイエス時代で、5枚目となる傑作『危機』まで在籍し、イエス独特のドラマ性と構成美をリズム部分で作りあげたがとくに『危機』での硬軟自在、決して重くなることのないプレイは、今聴いてもスリリングで魅力的だ。

と同時に、ここでの限界を感じ、次のステージを考えていたブルーフォードの前に現れたのが、これまたジャズ・ロック的な要素を盛り込みつつ新展開を求め模索していたロバート・フリップで、彼の加入で新生キング・クリムゾンが誕生、リリースされた5枚目のアルバム『太陽と戦慄(Larks' Tongues In Aspic)』は細かい変拍子と錯綜するインプロビゼーション、静と動が激しく交わりつつ展開する緻密な構成、凶暴性と叙情を完璧に描き出した傑作として今もクリムゾン史に圧倒的な影を落とすものとなった。

80年代クリムゾンで追求されるポリリズミックな音への道筋など語るべき点も多いが、大きな体験となったのが、この時期のクリムゾンに在籍したフリー・インプロバイザー、ジェイミー・ミューアとのセッション体験で、いわゆるロック的な定型に閉じ込められることなく自在に発想を広げる姿勢は、この後の活動にもつながっていく。自身のグループ、ブルーフォードや実質的なリーダー・バンド、アースワークスなどの作品も数多い人だが、あえてこのクリムゾン期のアルバムを代表作として選んだのは、彼にとっても重要な起点となったものだからだ。

その後、クリムゾンは『暗黒の世界(Starless And Bible Black)』、『レッド』という素晴らしい作品を残して解体、その後はジェネシスのツアーに参加したり、さまざまな人とのセッション、初のソロ・アルバムを作るなどし、大きな方向性としてはジャズ・ロック的な志向だったが、1978年にクリムゾンを共にしたジョン・ウェットン(B/Vo)の誘いでU.K.に参加。エディ・ジョブソン(Key/Violin)、アラン・ホールズワース(G)によって作られた『U.K.(憂国の四士)』はプログレ・オールスターと評判を呼び、パンク・ムーブメントが吹き荒れ、オーソドックスでテクニカルなプレイヤーたちには生きにくい時期にひとつの明かりをともすものでもあった。

しかしよりジャズ・ロック的な方向を目指すブルーフォードとホールズワースが脱退し、新たなグループ、ブルーフォードを結成するものの長続きはせず、ここで持ち上がったのがクリムゾン再結成で、『ディシプリン』を始め3枚のアルバムで展開されるポリリズムを核とした新サウンドには賛否両論が巻き起こった。

その後、クリムゾンの停止以後の動きは忙しい。ジャズに傾いた自身のバンド、アースワークスの結成、実質的なイエス再結成のアンダーソン・ブルーフォード・ウェイクマン・ハウへの参加、そしてブルーフォードのスケジュール空きを待っていたフリップの要請に応じ再びクリムゾン再結成に加わるが、このときの編成はダブル・トリオと呼ばれる、ドラムスをパット・マステロットとふたりで担当するもので、意欲的な構成ではあったが2枚のアルバムを作った後に脱退、以後、ジャズに重心を置いた活動となりツアー、レコーディングなどに参加していたが、約10年前にはライブ活動からの引退も表明。

ヒストリーや音楽性を振り返ると頑固なイメージを受けるが、プレイそのものは非常に柔軟で、だからこそ多彩な音楽性のプログレの重要な礎を築くことができたのだ。この人のあのプレイがなかったらロックの名盤物語は違っていた。(大鷹俊一)



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