「自分は悲しいインディー・ガールのステレオタイプを通して見られていると思っていたから、喜びのアルバムを作るなんて予想外で、みんなが一番驚くだろうと考えてた。『ジュビリー』という言葉自体が、熱狂的な喜びとか、リアルな感情の解放を表していると思う」
ジャパニーズ・ブレックファストを率いるミシェル・ザウナーが4年ぶり3枚目となる『ジュビリー』を完成させた。が、実はその直前に彼女が書いた回顧録『Crying in H Mart』がニューヨーク・タイムズのハードカバー・ノンフィクション・ベスト・セラー・リスト2位を獲得するという快挙を達成!
なんとも華々しい幕開けだが、彼女は25歳の時にがんで母を亡くし、最初の2作でその苦痛と対峙し、このベストセラー本でも母の喪失を克明に記している。しかし、そこですべてを吐き出したからこそ、今作は「祝祭(ジュビリー)」となったのだ。先にシングルでリリースされたワイルド・ナッシングとの共作“Be Sweet”にも象徴的だが、80年代的ポップさが溢れるキャッチーさの中で、彼女の根底にある奇妙さがより際立ち、そこから喜びを掴み取ることを決意しているのが今作だ。
ケイト・ブッシュ、ランディ・ニューマン、ビル・ウィザースなどに影響を受けた現代のUSインディー・ロックの良いところをかき集め、それをアップデートしたような作品で、アートワークの干し柿のように、孤独な1年を経験した我々の傷心を甘く優しい気分にさせてくれる。(中村明美)
ジャパニーズ・ブレックファストのインタビューは、現在発売中の『ロッキング・オン』7月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。