「僕にとってソロ活動は、シンガーになる試みだったんだよ。実際やって良かったと思っているし、そこで発見したことは、自分の声にもできることはあるけれど、制約も多いということ。もちろんギターも限界はあるけど、声ほどではない(笑)」
これはある種の発明なのだと思う。前作から約2年ぶりとなるポール・ギルバートの新作は、全編インストゥルメンタルでありながら、そこに歌詞が伴っている。
どういうことかというと、まず歌詞を書き、その物語に沿ったメロディを「ギターで歌う」という手法がとられているのだ。しかも弦楽器のみならずドラムや鍵盤に至るまでを彼自身が演奏し、敢えて歌うことだけが封印されている。
MR.BIGをはじめとするこれまでの長い活動歴の中で、常に正確無比な超絶ギタリストとして認識されてきた彼が、実は多面的な音楽家であることはファンの間ではよく知られているはずだが、こうした大胆な発想で完成に至らしめられた『ウェアウルヴス・オブ・ポートランド』という作品が、彼自身のこれからの音楽人生において重要な意味を持つことは間違いないだろう。
その新作タイトルが示唆するように現在はオレゴン州ポートランドに拠点を置いている彼をつかまえ、この画期的冒険作の背景にあるものを探った。(増田勇一)
ポール・ギルバートのインタビューは、現在発売中の『ロッキング・オン』7月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。