音楽という名のタイムマシンに乗せてもらった感が、今回はいちばん強かったかもしれないですね。どこにでも行けるんですもんね
サザンオールスターズのニューアルバムが完成した。実に10年ぶり。デビュー46年。16枚目のアルバムは、14曲収録のフルボリュームである。タイトルは『THANK YOU SO MUCH』と名付けられた。
という前段階において、いかに重く、覚悟を持って聴くべきアルバムが届けられるのだろうか、と僕は緊張した。
だが、実際に『THANK YOU SO MUCH』を聴かせてもらって、とても驚いてしまった。サザンが今、46年を経て立っているこの2025年の入り口において、サザンであることを心から楽しんでいるような、まるっきりみずみずしい実感を伴ったサザンサウンドを鳴らしていたからだ。
サザンがサザンを、今新たに追求している。サザンがサザンにやれること、というか、サザンでやりたいことを今新たに試している。桑田佳祐がサザンオールスターズの桑田佳祐として今やりたいこと、今試したいこと、その探究心が爆発している。そう、47年目のロックバンド、サザンが放つ16枚目のアルバムは猛烈に「今」なのである。
だが、サザンオールスターズである。僕たちが好きな、僕たちが求める、僕たちが愛し続けてきたサザン像は、すべて込められている。うつろう季節への思い、過ぎゆく慕情を綴った淡い言葉、エロと黄昏をめぐる円熟、日本語表現の粋を極めた文学性、あるいは、湘南、江ノ島、夏、ふるさと、希望、時代、日本といった概念、サザンとは何かという本質に向き合う姿勢──きっとあなたが思う「サザン」はこのアルバムの中にすべて込められている。
だが、ひとつ違うのは、そのすべてがこれまでのどんなサザンよりも新しく、そして、その新しい手応えを、サザンと桑田自身が心底から楽しみ、慈しむように鳴らしているということだ。サザンは今、また新しくサザンのやり方を見つけている──そんなふうに思うのである。
10年ぶりのサザンアルバムを語った、最速初公開の桑田佳祐インタビューである。完成直前、仕上げ作業真っ最中の本拠地・ビクタースタジオを訪ねてのインタビューだったこともあり、とても生き生きと実感を語ってくれた。とても楽しいインタビューだった。
今、また新たにロックに、バンドであることに向き合うサザンとともに2025年を迎えられていることは、音楽リスナーとしてとても幸福なことである。
インタビュー=小栁大輔 撮影=西槇太一
スタイリング=金光英行 ヘア&メイク=橋本孝裕 (SHIMA)、フジワラミホコ (LUCK HAIR)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年3月号より抜粋)
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