【JAPAN最新号】Nakamura Hak、生身の声が響かせる、歌という名の波動

【JAPAN最新号】Nakamura Hak、生身の声が響かせる、歌という名の波動
葛藤、迷い、諦め、憂い、そして、希望。人間の身体から発せられる声には、それ自体に膨大な感情の情報が刻まれている。シンガーが声を放った瞬間、いきなり心を掴まれてしまうことがあるのは、そのせいだ。そう、ただ歌があればいい。Nakamura Hakの楽曲に触れたとき、そんな当たり前のことを久しぶりに思い出した。

これまでに発表された彼女の楽曲はすべて歌とアコースティックギターによる一発録りで、修正、加工、編集などはまったく行っていない。すべての音がデジタル的に処理されることがデフォルトになっている現在において、彼女のスタイルは極めて異例。ただ音楽の歴史を振り返ってみれば、その場で演奏した音をそのまま録るという手法は録音芸術の原点であるとも言える。

1st EP『白は夢』に収められた“善と悪”は《いつ誰かに殺される/かもわからないなんて世界》というフレーズで始まる。緊張感と疾走感をたたえたアコギ、加速度的に切迫感が増していくボーカルが共鳴するこの曲でNakamura Hakは、善悪の境界線が崩れた今の社会を背景に、僕らはなんのために生きればいいのか?という本質を一人ひとりのリスナーに問いかけている。


6月10日にリリースされる1st シングル『ただ美しい呪い』のタイトル曲は、テレビアニメ『とんがり帽子のアトリエ』のエンディングテーマに起用されたミディアムバラード。微かに聴こえるブレスと《夜に仕舞い込んでしまった/もう僕らに「いつか」は来ないと》という言葉に導かれるこの曲には、絶望に苛まれながらも、決して生きることを諦めず、どこかにあるはずの光に手を伸ばそうとする人間の姿が投影されている。


EP『白は夢』、シングル『ただ美しい呪い』はいずれもCDのみのリリース(上記の2曲と“夜に浮かぶ”は配信中)。ヘッドホンやイヤホンで没入するのもいいが、個人的にはスピーカーで鳴らすことをお勧めしたい。彼女の声が空気に触れた瞬間、あなたにどんな変化が起きるのか。そのことをぜひ、確かめてほしいと思う。

文=森朋之
(『ROCKIN'ON JAPAN』2026年7月号より抜粋)


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