タイラー・ザ・クリエイター、出演したマウンテンデューのCMが人種差別的だと炎上して削除に
2013.05.02 20:30
先月、ソロ新作『ウルフ』をリリースしたオッド・フューチャー(OFWGKTA)のタイラー・ザ・クリエイターだが、清涼飲料水ブランド、マウンテン・デュー用に製作したCM3本が人種差別的で女性への暴行を軽々しく扱っているとして大きな批判を浴びている。
CMはあくまでもネット公開用で、オッド・フューチャーのユーチューブ・チャンネルとマウンテンデューのオフィシャル・サイトで公開されていたが、苦情や批判を受けて、どちらのサイトでもすでに削除されている。
CMは3本シリーズとなっていて、特に問題となったのが3本目の内容だった。この中では暴行を受けて松葉杖をついている女性が警察の担当官から一列に並べられた容疑者の中から思い当たる人物を選ぶように要請される。容疑者らはオッド・フューチャーのメンバーやタイラーの友人らが演じていて、さらにここに紛れ込んでいる一頭の山羊以外は全員アフリカ系アメリカ人という構成になっている。
実は一本前のCMではこの山羊がウェイトレス役の女性にマウンテンデュー欲しさに暴行を働くという内容になっていて、犯人はこの山羊なのだが、山羊はタイラーの声で「色男をチクったりすんじゃねえぞ」「口を閉じてろよ」などと女性を脅す。犯人を選ぶように捜査官に促された女性は取り乱して「わたしにはできない!(I can’t do this!)」と叫んでしまうが、この女性への暗に込めたメッセージが「Do it!(やれ)」というもので、これが現在のマウンテンデューのキャンペーン・フレーズとなっている「Dew it!」との語呂合わせになっているとAP通信は伝えている。
また、捜査官は女性に判定を促す際に「どうせドゥーラグを頭につけてるやつだろ」と言い放っていて、こうした描写も差別的だと指摘され、ある評論家は「史上最も人種差別的なコマーシャル映像」とこのCMを断じ、今回の問題に拍車をかけることにもなった。
メーカーのペプシコは動画の削除と同時に謝罪を表明しているが、タイラーのマネージャーであるクリスチャン・クランシーは次のように釈明している。
「タイラーには人を傷つける意図はなかったのですが、もちろん、こうした表現で傷ついた人にとって受けた傷は個人的で充分に考慮すべき問題です。傷ついた人たちへの敬意から今回のCM映像は削除されました。タイラーのことを知っていて評価している人たちにはわかるはずだと思いますが、タイラーはユーモアを通して決まりきったステレオタイプの表現の枠を押し広げようと試みるアーティストです。タイラーはデイヴィッド・シャペル(人種差別などを逆手に取った際どいユーモアを繰り出す人気の黒人コメディアン)で育ったような人間なのです。今回の問題には様々な文脈があり、タイラーとしても言いたいことはあるのできちんと環境さえ整えばタイラーもよろこんで議論に参加するはずです」
さらにクランシーは「傷ついた人にとって文脈や背景などの説明は助けになるかもしれないし、そうでないかもしれないが」と断りながら、次の4点ははっきりさせておきたいとしている。
1. 今回のスポットCMシリーズはマウンテンデューに取り憑かれてしまうおかしな山羊を中心に構成した明らかにナンセンスなストーリーをシリーズにしたものです。
2. 前面に映っている女性は最初のシリーズから出演している女性です。
3. 整列させられた人物たちはみなタイラーの友人やオッド・フューチャーのメンバーで、この日の撮影にたまたま参加できた人たちです(Lボーイ、レフトブレイン、トラッシュ・トークのギャレット、エロル)。
4. タイラーがこのCMで人種的な議論を持ち上げようと意図したところはまったくありません。誰が見ても明らかなようにこれは単純にくだらない話で、真剣に受け取られるべきものではなかったのです。