イギリスで最大のミュージシャン組合がスポティファイに対して印税契約の改善を要求

イギリスで最大のミュージシャン組合がスポティファイに対して印税契約の改善を要求

イギリスで最大規模を誇るミュージシャンの組合組織がスポティファイに対して、アーティストへの最低保証額を増額するように要求していることが明らかになっている。

組合は3万人の組合員を擁するミュージシャンズ・ユニオンで、BBCラジオや民放のラジオ局で行っているような、まとまった金額を設定しての支払い契約をスポティファイに要求していると『ザ・ガーディアン』紙が伝えている。

スポティファイの条件はストリーミング1回につき0.4ペンスという設定になっていて、100万回聴かれてもアーティストには4千ポンド弱(約62万円)しか収入として手に出来ない換算となっている。その一方でBBC2局では、3分の曲が放送された場合、59.73ポンド(約9377円)の放送料が発生して作曲家に支払われ、さらにほぼ同額が今度はレコード会社と演奏アーティストの間で折半される取り決めになっているという。組合側はこのBBC2の方式をモデルにしながら、印税額をこれよりは抑えながらスポティファイに要求していくという。

こうした論議は7月15日に料金設定が安すぎて新しいアーティストのためにならないからと、トム・ヨークやナイジェル・ゴドリッチがアトムス・フォー・ピースと自身のソロ作品、そしてウルトライスタの作品をスポティファイから引き上げたことが端緒となっている。ただ、プロデューサーのスティーヴン・ストリートなどは、もともとレディオヘッドが『イン・レインボウズ』でリスナーの言い値でのダウンロード配信を行った時からデジタル音源の価格破壊は始まったのだとして、トムの言動を偽善者的だと批判した。

その一方でミュージシャンズ・ユニオンの事務局長のジョン・スミスは次のように語っている。
「この一週間言われている議論はまったく正論で、駆け出しの新人アーティストにとってはまとまった収入を稼ぐのがとても難しい状況になってきています。ストリーミングのビジネス・モデルは演奏家を利するように工夫されるべきです。わたしたちとしては、こうした問題にすべて関わる知的財産権法の適用がきちんとアーティストにとって公平なものになるように再調整されるように希望します。BBCラジオや民放のラジオではPPLやPRS(いずれも著作権管理団体)によって認可されたレコーディングの使用料は作曲家に支払われ、さらにレコード会社と演奏家の間で折半もされています。演奏家の場合には、著名なミュージシャンから一トライアングル奏者まで一律に扱われていて、こうした公平さをわたしたちは実現してほしいと思います」

イギリスのシンガー・ソングライターのトム・マックレイは、違法ダウンロードを無効化しつつ利益をもたらすからこそスポティファイは音楽産業を救うとスポティファイが掲げてきた主張は間違いだったことがもはや証明されたと語っている。トムはこれまでは合法で印税を払っているからという理由だけでアーティストをいかにも支援しているとみせかけていたモデルが見破られていなかっただけだと指摘している。

トムはすでに自分の作品をすべてスポティファイから引き上げたというが、「このままストリーミング印税がレコーディング音源の主な収入源となってしまったら、レコード会社以外の関係者全員が搾取されることになるんだよ」と語っている。「どおりでスポティファイへの出資の多くが大手レコード会社だったりするわけだよ」。

これに対してスポティファイはこれまで5億ドル(約495億円)もの金額を著作権保有者に支払ってきたとして、2013年度末にはその額も10億ドル(約990億円)を越えるだろうと訴えている。この金額の大部分は新しい才能の育成のために使われているのだとスポティファイは次のように説明している。

「わたしたちは可能な限り最高にアーティスト・フレンドリーな音楽サーヴィスを提供するために100パーセント誠心誠意を尽くしていて、スポティファイによってどうやってアーティストのキャリアを築いていけるか、常にマネージャーやアーティストとの意見の交換をさせてもらっています」
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