ピーター・ガブリエル、スポティファイについて「倫理的な問題を感じる」と語る

ピーター・ガブリエル、スポティファイについて「倫理的な問題を感じる」と語る

大ヒットした1986年のアルバム『SO』の全曲再現を含んだバック・トゥ・フロント・ツアーのイギリス・ツアーを10月に終えたピーター・ガブリエルだが、『ローリング・ストーン』誌に対して12月4日にリリースしたカヴァー・プロジェクト『ピーター・ガブリエル アンド・アイル・スクラッチ・ユアーズ』について語っている。

『アイル・スクラッチ・ユアーズ』はピーターが2010年にリリースしたカヴァー・アルバム『スクラッチ・マイ・バック』への返答となるアルバムで、『スクラッチ・マイ・バック』でピーターが取り上げた作品のアーティストが、逆にピーターの作品をカヴァーするという企画の内容になっている。収録アーティストにはルー・リード、デヴィッド・バーンのほか、アーケイド・ファイア、ボン・イヴェールらが参加していて、そもそもは『スクラッチ・マイ・バック』の制作に取りかかった時から作品をカヴァーするアーティストに『アイル・スクラッチ・ユアーズ』への参加を要請していたという。リリースも2枚同時という形で予定されていたが、結局、一部参加を見送るアーティストも出てきたため、今まで時間がかかったことが明らかになっている。

『アイル・スクラッチ・ユアーズ』には結局、デヴィッド・ボウイ、ニール・ヤング、レディオヘッドが参加を見送っているが、たとえばデヴィッド・ボウイについては演奏はやりたくないと固辞していて、それは自分がカヴァーを持ちかけた時からデヴィッドもはっきり断ってきていたピーターは語っている。ただ、今回のアルバムにはカヴァーした“ヒーローズ”の共作者であるブライアン・イーノが参加している。

その一方でニールは多忙過ぎてできなくなったという話で、「実際に会った時はちゃんと投げ返すからと言ってくれてたんだけど、現実的には今回やってくれた人の数だけでも、よくこれだけやってくれたなというものだから。みんなやる気はあるんだけど、いろいろやらなきゃならないことができちゃうんだよ」と語っている。その一方で、“ウォールフラワー”のカヴァーを提供する予定だったトム・ヨークは結局、参加を見送ることになり、その理由もはっきりしていないとピーターは語っている。

「バンド内の政治が関わっているのかもしれないし、あるいは僕がトムにしか掛け合っていなかったことがよくなくて、僕のせいだったのかもしれないけど(ピーターはレディオヘッドの“ストリート・スピリット(フェイド・アウト)”をカヴァーしていた)。人づてには気に入らなかったと……つまり、トムが聴いた時、あるいは形になりつつあるものを聴いた時にそれがお気に召したのかどうか、よくわからないところでね。わかんないんだけど。とにかく、どうしてやめることにしたのかははっきりさせてもらってないんだ。実現してたらよかったんだけどね」

また、ルー・リードによる“ソルスベリー・ヒル”のカヴァーは、まったくもってルーらしいサウンドになっているが、これについてはピーターの周囲では相当に好き嫌いが別れているということで、ピーター自身は「大好きだ」と語っている。「ルーは2つ3つといろいろアプローチを変えて試してくれたんだよ。すごく力を入れてやってもらえたから、恩恵にあずかったと思ってるよ」とピーターは振り返っている。

なお、本人の思い入れの強い曲はボン・イヴェールによる“カム・トーク・トゥ・ミー”のカヴァーのようで、もともとは自身の娘について書いたこの曲についてピーターは次のように語っている。

「(この曲を書いた時)僕はちょうど離婚しかかっている頃で娘はちょうど思春期に差しかかった頃だったから、まあ、このごたごたがすごくこたえる年頃だったんだね。僕にとって子供たちから遠ざかるのは打ちのめされるような体験だったから。おそらく、これまで生きてきて僕にとっては一番辛い体験だったと思うよ。自分の父親を亡くしたのと同じくらいにね。とってもしんどい経験だったし、離婚した元亭主というのはみんなすっからかんになっちゃうもんだから、それもまた始末が悪いんだよ……だけど、娘がその後、僕にボン・イヴェールを教えてくれたわけだから、ま、いい形で一巡りしたかなあっていうね」

なお、ピーターはインタヴューでスポティファイへの疑問も露わにしていて次のように語っている。
「スポティファイには疑問を感じるよ。サービスとしては素晴らしいものだと思うし、いつでもなんでも聴けるのもすごいことだと思う。でも、連中はやっぱりレコード会社に自分から擦り寄っているわけだよね。つまり、レコード会社に対しては持ち株を譲与しているわけで、アーティストへの支払いと関係ないところでレコード会社への支払いを行うことができる仕組みを作っているんだよ。こういうやり方にはすごく根本的なところで倫理的な問題を感じるよ。もうちょっとアーティストに対して敬意を払ってもらいたいと僕は思うけどね。いろんな形の支払いを持ち出してはくるのはいいんだけど、レコード会社が貰っているものと較べてどれもこれもあまりにも微々たるものでしかないんだ。20年、30年、あるいは50年頑張って手にしてきたその見返りと権利が今奪われつつあるんだよ。ただ、もう成功したアーティストにとっては致命的な痛手にはならないわけで、というのも僕たちはライヴとかで埋め合わせていくことができるからなんだ。でも、アーティストは他に稼ぎを考え始めなきゃならないだろうね……」

なお、現在のツアーは来年の春に短いヨーロッパ・ツアーを行って締め括るとピーターは語っているが、フィル・コリンズと自分も含めたジェネシスの再結成の可能性も考えられると語っていて、せっかく全員が生きているうちにやっておきたいと自身の心境を明らかにしている。

ルー・リードによる"ソルスベリー・ヒル"のカヴァーはこちらから。
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