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 ソロ10周年というメモリアルな奥田民生の2004年。その締め括りが、今日のこのライヴだ。
 1曲目、“プライマル”。その歌詞通り、愛も欲望もその他いろいろも全て音の塊に込めてドカンと吐き出す、シンプルで豪快なロック・ナンバーがフロアに投射される。最近よく「とにかくライヴがやりたい」と話す民生は、この日もまるでおもちゃを手にした子供のように心底楽しそうにロックンロールを鳴らしていく。民生の曲はシンプルだ。だがそれは単調さとは全く違う。民生は一音の中で楽しさも悔しさも悲しみも喜びも、私達が抱えるすべての感情を豊かに鳴らすことができる。それが誰も真似できない、民生の凄さだ。
 中盤、「雪が降ったから」と始めた “雪が降る町”。季節の情景と些細な日々の営みを堪らなく愛しく響かせるユニコーン時代の名曲に、巨大なフロアを埋め尽くしたオーディエンスから大きな歓声が上がる。さらに井上陽水の“リバーサイド・ホテル”とパフィーの“海へと”も披露。民生のブルージーな顔が前面に出る前者とポップに弾ける後者、対照的な2曲はヴォーカリストとしての懐の深さをさりげなく見せ付けていた。
 ラストは“さすらい”から“愛のために”へ。迷いない民生の声が真っ直ぐに伸びていく。この10年間も、その前も、民生は自分のペースでロック街道を走り続けてきた。そしてそれは来年以降もずっと続くのだ。民生はこれからも人生をロックし続け、それを高らかに鳴らし続ける。私達にはこんなに頼もしいロッカーがついている、その事実に改めて勇気付けられたライヴだった。(有泉智子)

1 プライマル
2 何と言う
3 スカイウォーカー
4 リバーサイドホテル
5 アーリーサマー
6 雪が降る町
7 海へと
8 サウンド・オブ・ミュージック
9 御免ライダー
10 さすらい
11 愛のために