歌の主人公が感じている、匂いや、温度や、息づかいや、心の揺れや、風の感触や、喉の奥の痛みまで、何もかもが自分の中にある「いつかの記憶」を呼び覚ましながら実に細やかに再生される。
そして先日、発売されたニューアルバム『May Dream』は、その自分のなかにaikoの歌があるような、aikoの歌の中に自分がいるような、日常への憑依力が異常である。
特に1曲目“何時何分”と3曲目“冷凍便”は、どんなソングライターも絶対に真似のできない、すごいところにいっていると思う。
現在発売中のCUTでは、そんなニューアルバムについてaikoに語ってもらっているが、実はインタビューしたときは、アルバムが完全には完成していなかったので、1曲1曲について細かく聞いていくことはできなかった。
その代わり、このアルバムが持つ異常な日常憑依力を解き明かすべく、今回のアルバムタイトルにも含まれている「夢」をキーワードに、aikoの頭の中の世界と、そこから音楽が生み出されるメカニズムに迫った。
なぜaikoが音楽と共に生き、そしてなぜ今、ここまで濃厚なアルバムを作り上げたのかが、ここでしか読めない爆笑エピソードと共によくわかるインタビューになっていると思うので、ぜひ『May Dream』を聴きながら読んでほしい。(古河)