西川美和監督は言葉がどれだけ「役立たず」かよくわかったうえで、言葉を大切に紡ぎながら映画を作り続けてきた作家だ。
そんな彼女が作る映画は、とても皮肉で残酷なのに温かくて最後は心を整体治療されたみたいに少しスッキリする。
本木雅弘が演じる、この『永い言い訳 』の主人公は作家で、妻が不慮の事故で突然死んでしまったあとに茫然と「役立たず」の言葉を垂れ流しながら、かなり無様に生きていくことになる。
でも、そうやって「永い言い訳」をしながら生きていく彼を見ているうちに「嫌な人」と「優しい人」がさほど違わないことに気付かされる。
それがわかったとき、胸につっかかっていた異物がストンと胃の中に落ちるように少しスッキリするのだ。
10月14日公開。(古河)
西川美和最新作『永い言い訳』を観た
2016.06.02 21:45