『ゆれる』で、瞬く間にその知名度を上げた西川美和監督の最新作、『ディア・ドクター』を観てきました。30分前に会場に着いたのに、もう既に7割埋まっててビックリ!いかに注目されているかがわかります。
そして断言できます、前作以上の傑作です。言葉にならない感情を持て余す鶴瓶師匠の名演技と、風にゆれる青い稲穂の残像で、映画の世界にたちまち飲み込まれていきました。こんな感覚、そうそうない。
田舎って人が温かいってよく言うけど、実はとても残酷でドライな世界でもある。そして、何事にも、真実でも嘘でもない、表でも裏でもない、あいまいなグレーゾーンが存在する。前作もこの『ディア・ドクター』も、この二つのモチーフが緻密に描かれていてとても興味深い。きっと今後も、西川監督は「ゆれる」人々を撮り続けていくんだろう。
何事にも裏があると知っていて、それをひっぺはがしてこうやって見せてくれる人こそ、本当に人間を知り、愛したいと願う人なのかもしれないな。とにかく、これを観ずして今年の日本映画は語れませぬ。いまだ余韻に浸ってます。もう一回観たい。(小島)