この間の芥川賞の話

この間の芥川賞の話

音楽の話ではありませんが、私、一応、SIGHTで、
北上次郎×大森望のビッグ2書評対談ページや、
作家インタヴューのページを担当しているので、
まあ、こういう話題もありかと。

それこそテレビのワイドショーでまで報じられるほど
話題になっている、1月17日の、芥川賞受賞作家・
田中慎弥の、悪態つきまくり会見、
私の周囲では賛否両論でした。
いや、両論じゃないな。否のほうが多かった。

大人げない、とか。
あんなことしても文学シーン(なんて言葉ないけど、便宜上
こう書きました)にとって、いい影響、何もない、とか。
ノミネート5回目でようやく受賞で腹が立ってた、
って、だったら伊坂幸太郎みたいに、ノミネートの
段階で「もう結構です」って辞退すればいいじゃないか、
しなかったってことは、結局、芥川賞ほしかったんじゃないか、とか。

どれもわかる。というか、そうだろうなあとは思う。
が、私、あれ、どうもこう、否定する気になれないのです。
というか、正直言って、好感を持ったのでした。
痛快だったというか。大人げのなさも含めて。

でも、そのあたりをうまいこと説明できない。
どう言えばいいんだろう。
とか思っていたら、SIGHT強力執筆陣のひとり、
小田嶋隆さんが、日経ビジネスオンラインの連載
「小田嶋隆のア・ピース・オブ・警句」の本日アップの回で、
そのことについてずばっと書いておられました。
読んで、「ああっ! 腑に落ちるとはまさにこのこと!」と、
いたく興奮しました。
おもしろい! 

私、元々石原慎太郎、嫌いですが、そして小田嶋さんもお嫌いだそうですが、
でも、そこを「田中慎弥肯定」の論拠に一切していない、このコラム。
すごい説得力。

「小田嶋隆のア・ピース・オブ・警句」は、こちらから。
会員登録しなきゃいけないけど、無料で読めます。
http://business.nikkeibp.co.jp/


あと、私があの田中慎弥の会見を肯定したくなったのは、
数年前、松尾スズキさんが「老人賭博」で候補になったけど
受賞は逃した時の結果が、「該当者なし」だったことに、
すんげえ腹が立ったから、というのもあると思う。

賞のシステムとか、選考委員が全部下読みしてる
わけねえだろとか、いろんな事情があるんだろうけど、
でも、そういうのをとっぱらって「物理的に」見ると、
「ノミネート作品はあるけど受賞作なし」って、ヘンじゃん、だって。
ノミネートできる作品がありません、だから受賞作も
ありません、っていうんならわかるけど。
「受賞は無理だけどノミネートはできるレベル」とか、
そういうことなのかもしれないが、じゃあ何のための
ノミネートなんだ、という話になるわけで。


ただ、あの田中慎弥の記者会見ばかりが話題になって、
同時に芥川賞を受賞した円城塔「道化師の蝶」が
かすんじゃってるのが、ちょっと残念というか、気の毒ではあります。
別の作品ですが、円城塔の「これはペンです」は、
上のSIGHT最新号掲載の「ブック・オブ・ザ・イヤー」特集の中で、
文芸・評論編部門(by高橋源一郎×斎藤美奈子)と
エンタメ部門(by北上次郎×大森望)の両方で選出された、という、
この特集始まって以来の快挙を成し遂げた作品なのです。

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