虚飾は要らない、自分たちの中にあるものだけを歌っていけばいい――という「行動するパンクス」の確信、そして「世界の中での自分たち」という視点を血肉化するに至るまでのプロセスを、メンバー4人全員がじっくり語ってくれた。10月3日発売のアルバムと併せて、ぜひとも9月29日発売の『ROCKIN’ON
JAPAN』11月号のインタビューもご一読いただければと思う。
誌面に載せきれなかった話で特に印象的だったのは、今作のミックスの話。
日本のパンクアルバムとしては快挙と呼ぶべき今作『Conscious+Practice』のサウンドの一因を担っているのは、前作『FAT』からさらに鍛え上げられた世界基準のタフでタイトなミックスだ。
「『FAT』の音が一個マイルストーンというか。あそこからエンジニア、テックチーム、制作チームも変わってないんですけど、『ああ、そうだよね、俺たちこういうサウンドでパンクを鳴らしたいんだよね』っていうのが揃った感じがして」とShunは今作のミックスについて語っていたが、自らの音像のミックスを『FAT』からさらに前進させることができた理由として、彼らが挙げていたのは「英語詞」だった。
「今回、英語っていうのがでかいですね。子音中心の英語の音域と、母音中心の日本語の音域がそもそも違うから、英語にすることによって音像の重心が変わる。英語のおかげで、ギターサウンドの重心が下げられるというか、リアルに海外のミックスになれるんだよ――みたいなことを、マスタリングのエンジニアさんが話してくれて。『日本語だとできないミックスがある』って。英語詞だから今回、そこまで追い込めたのかなって」(Bunta)
もちろん、英語詞でもドメスティックな質感のミックスの音楽は数多くある。が、彼らは日本/世界の枠組みを超えてパンクの理想を追い求め続けていたからこそ、英語詞と日本語詞の相違をも進化の糧にすることができた、ということだろうと思う。
TOTALFATが途方もなく充実した季節を迎えていることを、『Conscious+Practice』はダイレクトに伝えてくれるはずだ。(高橋智樹)