でも憂いてばかりはいられない。
嘘をはねのける真摯な毒を持ちながら、まっすぐ恐れず前に足を踏み出すしかない。
元々は5月にリリース予定だったのが延期となり、7月1日に遂にリリースされたSHE'Sのニューアルバム『Tragicomedy』は、そんな今の時代のサウンドトラックとしてのフォーカスが繊細かつ大胆に絞られた強力な作品だ。
井上竜馬の緻密さとエモーショナルさのどちらにもリミッターをかけないソングライティング、そしてそれを斬新なのに普遍的なフォルムでアウトプットする唯一無比のSHE'Sサウンド。
彼らが突き詰め続けてきた揺るがないものと、急激なカーブを描いて加速し始めた時代の渇きが重なって、SHE'Sは今こそ響き、刺さり、包み込む存在になった。(古河晋)