シャイトープの“tengoku”のMV公開! その「歌」の世界を拡張するショートフィルムを味わってみて


人気の急上昇っぷりにMVの制作が追いついていないようにも思えるシャイトープ

これまでに世に放たれたMVは“部屋”“誘拐”“桃源郷”の3本。バイラルチャートを賑わせた“ランデヴー”も“pink”もMVがないとはびっくりだけど、でもそれも不思議じゃない。「歌」を聴くだけで脳内に映像が浮かぶこのバンドには、MVなんてなくたって充分なのだ。

ただ、それでもやっぱりその「歌」の世界が映像で拡張されるのを観てみたいというのも事実で、8月に配信リリースされた“tengoku”のMVが素敵なショートフィルム仕立てで届けられたのはとても嬉しかった。

この曲もシャイトープお得意のミドルテンポのバラードだけど、構成は少しトリッキー。語りのような歌始まりのAメロから、《出来るだけ 尽きるまで》の5音のリフレインが印象的なサビへと続き、2Aのあとはドラマチックな大サビで熱量を増すボーカルとともに感情を吐露し、ホーリーなコーラスが絡みながら、転調を挟んでラスサビのリフレインで爆発させる。

ボーカル佐々木想の詩才はこの曲でも冴えわたっていて、《君が取っておいた/デザートを2つ掌に並べて/1つは愛/もう1つは/生きる喜びだった》と、日常的な光景を起点とした尊い感情をプレゼントしてくれる。大サビでパッと視界が開けたところに飛び込んでくる《スーパーマーケットで見つけた/カラフルな果実の様な/毎日をありがとう/本当にありがとう》という真っ直ぐな言葉のパワーたるや。

佐々木想の詞(「詩」というほうが似合ってるかも)には具体的な情景描写が少なく、誰しもが私的な思い出を投影できる余白がある。MVで綴られる不器用な愛の行方は“tengoku”という曲のひとつの解釈であるはずなのに、「この曲はこの物語で描かれたふたりのためにあったのでは?」と思わされるのは、曲が持つ普遍性の証だと思う。(もちろんクオリティも素晴らしく、「完成披露試写が行われた際にも修正希望は一切なく、メンバー3人共がその作品に感動をし、涙ぐんで見終えた」というのがよくわかる)


ちなみに“tengoku”のカップリングの“Summer Conte”もとてもいい曲。すっかり秋めいた今、過ぎ去った夏を想いながらこっちもぜひ聴いてみて。(畑雄介)


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